限界フリーターくんの日常。第1章。

kaonashi

第1夜「日曜日のスーパーの風景。お客様は神様です。」

今日は連勤の中日。


日曜日いつも通りに競馬に負けなんとも言えない気持ちで働いていた。


俺はスーパーで働いている。


日曜日の昼間は人がもちろん多い。


色々な客がいる。


家族連れ


主婦


カップル


年配の方


作業着の人


酒くさい人


万引きの常習犯


何もしてないのに不機嫌な人


書ききれないほどいろいろな人がいる。


もうこの店で働いて6年目だ。

普通に会社員とかやってたら有望な奴なら責任者とかをやるような年だ。


働きながらふと冷静になってしまう瞬間がある。


子連れの夫婦。


自分と同年代であろう見た目。


この旦那さんは平日は朝から晩まで働いてこの家族を養っている。


自分は音楽をやっているって言い聞かせて。


いや、言い訳をして過ごして


良い年してフリーター。


目の前の仕事をただ惰性でこなすだけ。


客に理不尽にキレられてもただ謝る。


罵られてもただ謝る。


でも俺にはどれだけ考えてもこの人たちとの違いがわからない。

いや同じなんじゃないか。


て考えてたら思い出したんだけど


深夜ドラマだったと思うんだけど


そのシーン以外深く覚えていないんだけど強烈に残ってるシーンがあって確かレジ打ちのバイトかなんかをしてる若者が客に理不尽にキレられてその復讐をするみたいな内容だったと思う。


なんとなくボーっと見ててクライマックスのシーンに差し掛かった。


その復讐された客が「なんでこんな事するの」みたいなことを言ったんだけどそれに対して犯人がずーっと話をするんだ。一生懸命働いて生きてるのにみたいな。で1番盛り上がった所でこう言った。


「お前にとってただの景色なんだよ!!同じ生きている人間なのに」


って


そうなんだよ。


俺はただの景色なんだ。


イライラのはけ口。


ただのフリーター。


店員てだけで下に見て理不尽な態度を取られる。


お客様は神様か?いや悪魔だ。


なんてどうにもならない不の感情。


普段は同じ店員として気持ちがわかるから優しくしようなんて思っていても頭がおかしいとしか思えない客の対応をしてイライラした帰り道、コンビニの店員のちょっとした態度が鼻につきイラッとしてキツく当たってしまう。


俺も同じ悪魔だ。


そんな不の感情がめぐりだす退勤2時間前に声をかけられ我に返った。


「暑いね~お兄さん」


振り返ると常連のおばさんが居た。


このおばさんは独り身で近くの団地に住んでる。自分と似たような太めの体系をしてていっつも汗をかいててタオルで拭いてる。


独り身で家で話す人も居ないからだろう。自分を含め誰かれかまわず話しかけるんだけど不思議と嫌そうな顔をする人は居ない。


そんなおばさんと俺は良く世間話をしていた。


人生相談をしたり(社員に見られたら怒られる。)


そのおばさんが言ってたんだ。


「人も全ては縁の中にいる。自分の周りの人やモノは縁の中に居る。だから自分から離れてしまったら自分の縁から出て行ってしまったって事。でも追いかけたらダメ。縁が切れて無かったらまた戻ってくるし、その大事なものが自分の縁に戻ってきた時にその縁が切れないように準備をしておきなさい。」


どす黒くなっていた気持ちが晴れた。


自分も誰かの縁の中に居て。


普段曲を聴いてくれる人、友達、これを読んでくれている人。


が俺の縁の中に居る。


この縁の中で俺は景色では無いんだ。


離れたモノを追いかけるのは辞めよう。


きみもきみの縁の中で主人公で主役なんだよ。


まるで偉いお坊さんの説法みたいな深い話をされて目を丸くしてると汗で輝いたおばさんはまた笑っていた。


汗?いや後光?その太めの体系がまるで七福神の大黒天様と重なって俺はなんだか福が来そうだとありがたくなって手を合わせそうになった時。


レジが混んでる事を知らせるベルがなり俺はレジに戻った。




お客様は神様じゃないけれどお客様の中に神様が居た、話。

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