綾目視点ver続き 2
メンバーと20分ほど雑談したところで、振り付けの確認を行う。
「んじゃ、そろそろやりますか」
「そうだねぇ〜」
「そうですね」
「うむ、そうだな。そろそろやろうか」
「やるか〜」
今回は私が主役とのことなのでセンターを務めさせてもらう。
正直な話センターは苦手だ。
センターは当然一番注目されるし、振り付けも普段の位置と比べて多い。
体力と精神力を兼ね備えている人ならいいけど、私にはない。
だから、私は完璧にそれらをこなせるのか不安でしょうがない。
しかし、今回は私が主役なんだ。
主役がこんなんじゃ示しがつかない。
「よし、頑張るぞ〜!」
☆
振り付けを確認し終わり、数分経ったところで私たちはタクシーでライブ会場に向かっていた。
タクシーは2台。一台に3人、もう一台には二人で乗車することにした。
私は二人の方で、静奈先輩と同じタクシーだ。
「ライブ前に話す内容じゃないけどさ、衛星の件大丈夫なの?今日のライブにも来てるんじゃない?」
衛星とはストーカーのことである。
「大丈夫だと思いますよ。静奈先輩。最近は手紙も来ませんし、私に飽きたんだと思います」
「そうかな?私は逆に怖いけどな。ライブ前に何も起きないって」
「考え過ぎですよ」
「そうだといいけど…てか、ごめん。ライブ前に不安を煽るようなこと言っちゃってさ」
「大丈夫ですよ。逆に静奈先輩のその気持ちで、よりやる気になりました!」
「そっか。ならよかったよ」
嘘の衛星で先輩に気を遣わせてしまった。
いつか本当のことを言わないといけない。
そんなことを思ってるうちにライブ会場に着いた。
「ん、着いたね。行こっか」
「はい」
静奈先輩と一緒に降り、会場に入る。
会場に入った後は衣装に着替え、本番さながらのリハーサルを行い、何の問題もなかったのでそのまま1時間の休憩に入った。
「軽食でも買いに行く?」
「いいねぇ。いこいこ」
「メイチキが食べたいので行きます」
「メイチキか〜。この辺あったっけ?」
「ちょっと遠めですけどありますよ」
「なら、私と雪代と美琴でそこ行こっか」
「了解です」
「えぇ、何で私も〜」
「いいじゃん、最近体重が気になる〜とか言ってたんだから歩こ?」
「うっ。そ、そうだね。行くよ」
「よろしい。じゃあ綾目と遥はフレンドマートに行ってきてよ」
「わかりました」
「うむ、わかったぞ」
遥さんとフレンドマートに向かう。
「綾目ちゃん」
「どうしました?」
「いやまぁ、大したことじゃないんだけどさ。困ったことがあったらいつでも相談してね」
多分衛星のことだろう。
静奈先輩だけではなく遥さんにも心配をかけさせてしまっている。申し訳ない。
「ありがとうございます。でも、今は大丈夫だと思います」
「そっか。それならいいんだ」
そんな会話を交わしているとフレンドマートに着いた。
フレンドマートに着くなり遥さんはスイーツコーナーに直行した。
「おぉ、新作のスイーツだ」
遥さんは一昨日発売されたプリンケーキをキラキラとした目で見ている。
「毎回出るコンビニの新作スイーツはいつも楽しみにしてるんだ。でも、流石にこの量をライブ前に食べるのは…」
「二つ買ってメンバーで分ければ良いんじゃないでしょうか?」
「確かに。じゃあ二つ買うおっか」
嬉しそうにプリンケーキを手に取り、カゴに入れる遥さんは少し子供っぽかった。
同性の私ですら少しキュンときた。
その後もスイーツやら飲み物やらおにぎりやらを買ってコンビニを出た。
「たくさん買ったね。綾目ちゃん」
「そうですね。コンビニは美味しそうなものが、たくさんあって困っちゃいますね」
「そうだね」
大量の荷物を持ってライブ会場に戻った。
「おー、お帰り。遅かったね」
「ただいま。少し買うものを悩んでいてね」
「そっか。じゃあみんな揃ったしそろそろ共有しよっか」
買ったものを机の上に取り出す。
「おー!プリンケーキだ!これ楽しみにしてたんだよね〜♪」
「そりゃあ、よかったな。美琴」
30分ほど談笑した後、私たちはライブの準備に入った。
「ふぅ…緊張するね。綾目ちゃん」
衣装に着替えていると美琴が話しかけてきた。
「センターは大変だろうけど、臆せず頑張ってね!」
「ありがとう。頑張るね」
「綾目〜」
後ろから声がしたので振り返る。
静奈先輩だ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。いつも通りにやればいいだけだから」
「はい、いつも通りにやってみせます」
「うん、その意気だ」
緊張していることはどうやら静奈先輩には見抜かれていたらしい。
流石は静奈先輩だ。
「綾目」
後ろから遥さんに声をかけられた。
「今回の主役は綾目なんだから思う存分に輝いてくれ」
「はい!」
「私たちも綾目が輝けるようにサポートするからね」
「ありがとう」
「綾目様」
「ん、どうしたの?」
「今日の百合営業いつもより激しくしましょうね」
「なんで?!」
「百合営業はほら、ファンが喜んでくれますし、一番輝かせやすいですし」
「そ、そうなの?」
「そうなんですよ」
「そうなんだ…ちなみに、激しくってなにするの?」
「そうですね…綾目様のラインはどれぐらいですか?」
「うーん、キスぐらいまで、かな」
「く、唇にですか?!」
「ほっぺ。ほっぺにね」
「ほっぺですか…まぁ全然嬉しいですけど」
ファーストキスはみっくんがいいから雪代にもあげられない。ごめんね。
「今日の百合営業で綾目様を輝かせてみせますね!」
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