12話:だって私達の性別は
少しだけ情報を整理しようと思う。
俺は
目の前に座っている可愛い子は
自分のことを女の子だと認識して服を着ているのか、可愛い服が好きなだけで男の子だと認識しているのか。これによって話が大きく変わってくる。
だって今まさに、その
「……
「えっあっ、あ、すみません! えっとその、
そうだ、俺は
それからは関係がハッキリしないまま登下校を共にしたり遊んだりしていた。お互い、その話にあまり触れないように。
「……
顔を染めた
そりゃあ確かに今でも好きに決まっている。今日だって二人で遊びに行けて楽しかったんだ。でも俺が本当は女だって知ったらどう思うか。
多分だけど
つまり俺が女であることを伝えると嫌われてしまうのではないだろうか。けど隠したまま付き合うのも卑怯だ、告白した時は言い出せなかったけど……今から付き合うならば最初に話しておきたい。どうしよう。
……親父だったら後先考えずに筋が通っている方を選ぶかな。
「……すみません
「―――えっ?」
これで正解だよな親父。自分が好きになった子を騙したまま付き合うなんて、親父が知ったら絶対に怒るよな。あぁマジか、後悔はないけど今日で
「
「あぁ、両方です。身体も女で心も女。ただ色々あって男の格好の方が気が楽だったんです」
観覧車という狭いスペースで重い話をするのは疲れるな。空気が重くても逃げ場がないし、まだ一番上まで上がってもいない。残り時間どうなるかな、騙したなって罵倒してくれた方が気が楽だけど、
「……そう、だったのですね」
「すみません、言える勇気がなかったです。騙すつもりはなくて。でも、本当にすみません」
今度は俺の方が真っ直ぐ
「あ、あの……それで……さっきの質問の返答をお待ちしているのですが……」
「……はい?」
何の話だろう。さっきの質問……あっ、俺達が恋人なのか友達なのかという質問と、俺がまだ
そんなもの答える必要ないだろう、だって俺達の関係は今日で終わりなのだから。
「え、あ、だから……質問……私のこと好き……なの、でしょうか……?」
「……そりゃ好きですよ。だから伝えるべきことを伝えておこうと思ったんです」
俺がそう答えると、
「だ、大丈夫ですか?」
「い……痛い、です。頭の形が変わるかと……」
硬い物体に勢いよく頭をぶつけたら当然痛い。たんこぶが出来ているかもしれないな、降りたらなにか冷やすものが欲しいけど氷なんて遊園地には売っていないか。外にコンビニとかドラッグストアとかあったかな。
「痛た……あ、そんな話は置いておきまして……」
「……はい」
「えーっと……私も
え、もしかして
そ、それとも、本気なのか……?
「……俺のことが好き?」
「はい、大好きです!」
即答された。俺は
「えっと、
「……はい」
「じゃあ私も同じです。私も身体も心も男の子ですけど、女の子の格好の方が楽なんです」
「……ほ、本当ですか?」
それが本当なら、あまりにも都合が良すぎる話だ。思わず疑いそうになるけど、
男の子だけど女の子の格好をしている
「はい本当です。なので……お、お付き合いすることには何の問題ないかと思います」
「そ、そうなんですね……はは」
別に何も面白くないのに思わず涙が出そうになった。これって夢じゃないよな、本当に
「えーっと……あ、そうだ。以前は
「は、はい。分かりました」
そう言うと
「ずっと僕の隣で笑っていてね、
普段より少し低い、男の子らしい声。可愛い姿しか見ていないのに急にカッコよくなって反応に困る。心臓はうるさいし情緒は不安定になるし、ここで気の利いた返答が出来れば最高なのに何も言葉が浮かんでこない。とにかく反応は示したくて黙って頷いた。
「ふふ、ありがとうございます。これで
「あっ……よ、よろしく、お願い致します……」
可愛い声に戻った。なんというか、私の心の奥底にある女の部分を掻き乱された気分だ。こんなの反則だよ、これだけ分かりやすい好意を向けられて平常心を保てる訳がない。観覧車は少し前に一番上に到達したので、今はゆっくりと降りている。
こんな密室で残り時間どうするべきか考えるのは私には無理な芸当で、気がつくと隣に座っていた
そのまま地上に降りるまでお互いに動くことはなくて、係員さんが扉を開けてくれる直前まで抱きしめられたまま過ごした。もうすぐ閉園なので、この後はお土産屋さんに行くか、帰るかの二択だな。
「緊張したら喉が乾きました。ねぇ
「あ、いいですね……メロンにしようかな」
私が財布を出そうとすると
「今日は楽しかったですねぇ
「そうですね、私も……あ、あ、俺も……楽しかったです」
本当に楽しかった。けど
……あ、そうだ。いいこと考えた。
「う、
「さっき頭を打っていたから冷やそうと思って。ダメですか?」
「え、えっと、心配してくれるのは本当に嬉しいのですが、なんか恥ずかしいですね……」
かき氷が入っているカップは猫の絵が描かれている。それを頭の上に乗せている
「ちょっとした仕返しです。可愛いですね、
「もう……怒るに怒れないじゃないですかぁ」
そのまま二人で談笑して、お土産屋さんで少し買い物をして帰りのバスに乗った。思ったより混んでなくて隣に座ることが出来た。色んな意味で疲れたので少し眠ってしまったけど、意識を手放す直前、バスの中はうるさかったのに
「おやすみ。大好きだよ、
―――
おまけ
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