テイク2 チュートリアル

(は? 何が起こって?)


 嗣は現在自分の状況を解析中だ。

 ハーレムかと思われていたが、違ったのか。本当に神の言った通り刑の執行中だったのか。


『ほほほ、呆気なく死んだようじゃな。ざまあざまあ』

「あ」


 黒い視界の中、眩い光を放つ神の映像が目の前に映し出された。音声もきちんと聞こえる。


『お主は女子に一斉に告白され死亡した。実に愉快じゃ。お主も本望であったろ? 良かったの~。告白されて死ねるとは中々出来ぬことよの~。実に滑稽であった』

 

 更にくくく、と神に大袈裟に笑われる。神の言葉を聞いて自分はやはり告白されて殺された事を自覚する。


「ただ男性と女性を間違えただけで、こんな残酷非道な事するなんて本当に神なのか」


 神じゃなくて、悪魔の間違いじゃないのか。それが自然的に出る答えなのではないかと思うばかりである。それだけで人間を殺しに掛かるとは畜生が過ぎる。


『わしはもっと貴様が死ぬところを見たいのじゃ。わしに感謝せい。今のはチュートリアルみたいなものじゃ。貴様はまだ生きられる』


 それなら生きる為に達成するしかないと、自然と嗣にも力が入る。もう死に晒せない。特に先ほどのような無様には死ねぬ。

 次で本当に死ぬ覚悟でやらなければならない。失敗は許されず、震える。死ぬところが見たいと言い出す神は、もう本当に狂っている。

 生きられるのは嬉しいが。


『その代わりお前の生に対する意欲を上げた。これでお前は生きる事が全てになっていく』


 なるほど、「生」に縋りつくようになってしまうのか。それもまた頭おかしいだろう。

 ふざけた神の遊びに付き合わされている。嗣に少々の怒りが芽生えていた。


「やる。あんなのでは終われない」

『じゃあ決まりだな』

「早くしてくれ」

『そう焦るな。すぐにスタートしてやる。くくく、そして――』


 映像ではあるが人差し指で指を刺された。再び告白されたら即死の学園生活がスタートする。秒針がチクチクと大きな音を鳴らし動き始めた。




———



 よし、戻って来れた。ホッと胸を撫で下ろしていると、横から真鍋の声がする。


「好きです。付き合って下さい」


【パーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン】

 

 そして嗣は現実に戻ったとほぼ同時に死亡した。

 ――即終了。



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