第28話

「特に変わった魔石ではありません。美しく魔力が豊富でご婦人が好みそうなデザインですので、価値は高いとは思いますが…この中央の赤い石は100年以上前のモノだと思います。しかし、モンブラン伯爵がご自身で鑑定されているのでしたら、それ以上のモノだとは思えませんが…」

 この彼は平民出のまだ21歳の新人だ。オリバーの鑑定では200年以上前と鑑定結果が出来ているのでまだまだ勉強不足ではあるものの間違いではない。


「では、わたくしもよろしいですか」

「ヨルタニア嬢、君はダメだ」

「なぜです!男の新人には鑑定させました。勉強のためにもわたくしにも鑑定させてください」

「まず、ボム士長が先だ」

「なぜ、そう…」

「ヨルタニア!黙っていなさい…モンブラン伯爵、なにか…」

「先入観をなくお願いします」


「いいだろう」

 ヨルタニアは不服そうにしていたがボム士長はネックレスを取り、鑑定をする。



 ボム士長は珍しい鑑定方法をする。ネックレスを両掌に包み、目を閉じる。

「父様、あれで鑑定出来るのですか?」

「黙っていなさい。ボム士長は突貫された方だ。細部まで鑑定なさるのだ」

 時間の流れが遅く感じた。鑑定を始めてから1時間ほど経った頃、ボム士長が目をそっと開いた。

「…」

「どうされましたか?顔色がすぐれませんが…」

 オリバーが話しかける。

「いえ、これはどういう経緯でモンブラン伯爵の手に?」

「それは…」

 オリバーが経緯を話そうとしていたら、ボム士長の手にあったネックレスが小刻みに震え出した。皆が驚いていると、ネックレスはボム士長の手からすり抜け、近くにいたヨルタニアに向かって飛んだ。


 オリバーが咄嗟にヨルタニアを引っ張り、ベゴニアがネックレスを掴んだ。

「アツッ!」

 ベゴニアは焼石のように熱くなっていたネックレスに驚いて手を放してしまった。ネックレスは床に落ちて転がった。急いでボム士長が拾おうとしたが、またネックレスはヨルタニアに向かって飛んだ。ボム士長は龍のカバンを開きネックレスに向かって投げた。カバンはネックレスに当たり、両方が床に落ちた。そのカバンをベゴニアが拾いネックレスがヨルタニアに向かって飛び出す所でカバンでキャッチした。そのままカバンをロックするとネックレスは動かなくなった。


「モンブラン伯爵、これはどういう…」

 はぁはぁと荒い息を抑えつつ、ボム士長はオリバーに聞いた。

「私にも何がなんだか…」

 皆息が荒い。ヨルタニアも引っ張られた勢いで尻もちを付いていて放心状態だ。

「そ、それよりボム士長、鑑定はどうなったのです?」

「おお、鑑定か…」


 我に返り、部屋にいた4名は落ち着きを取り戻すためにソファに腰かけた。そしてボム士長は鑑定結果を話し始めた。



 ボム士長は詳しく見ようとネックレスを掌に包み魔力を上げ、真相まで見ようとした。ところが閉じられたと言う。嫌がられたと言うのだ。こんな経験は始めただったし、ひどく驚いた。まるで魔石が意思を持っているかのようだと言った。

 しかし、それを拒否して奥までいった。拒否をされながら奥まで進んだと言う。


 鑑定ギフトを持っているオリバーやヨルタニアはそういった表現は理解が出来るがベゴニアは「真相」や「奥」という言葉の意味が分からないが、今はそれを聞ける雰囲気ではない事だけは分かった。


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