神と名乗る男
「ちょっと何その恰好」
アスカが俺の方を見ながら呆れた感じで聞いてきた。
「何って、そりゃあ神様なんだからばっちりいい印象を与えないと」
俺はいたってまじめに答える。
「いい印象って……あんたふざけているでしょ!」
「えっ?」
「何? その白のローブに白の布を巻いた格好は!何なの? カミサマ意識しちゃってるの?」
「ああ、そうだ。神様と言ったらこれでしょう! それに……じゃーーん!」
「……何? その嬉しそうな顔。ただの棒きれじゃない」
「ふっふっふっ。これは杖さ。神様といったらこれでしょ。かっこいいだろ」
……
「お子様ね」
「だーれがお子様だ! お前がお子様だからこの良さが分からんのだよ。それよりもお前の恰好。普段と何も変わらないじゃないか! お前こそ神様舐めてるだろ」
「私は神様じゃないもん。それにこの服は最先端なのよ! なんであんたは時代を逆行するのよ! おじいさんなの!? 時代をつ……」
「ちょっと待て! この話はいったん置いとこう。何のためにここに来たのか忘れたのか。少女を助けるためだろう。目的を忘れちゃいけないぜ。アスカ行くぞ!」
「…………偉そうに!」
「偉いんだよ!!」
そんなことを言いながら少女の元へ向かう。
少女はすでにこちらには気づいているみたいだ。
当然というかこちらを警戒している。
年はアスカと同じくらいだろうか。髪はショートでさらにそれを後ろで結んでいる。きりっとしたつり目でとても気が強そうだ。しかし一番驚いたのは、その貧相な服装。といっても服といってもいいのか分からないほど簡素なものだ。土色をしたただの布切れで最低限のところを隠しているだけのものである。
栄養が行き届いていないのかな。残念ながら胸の方は成長をしていな……
「止まれ!! お前たちは何者だ」
強い口調で少女がこちらを睨んでいる。
おっと、自己紹介がまだだったな。ふふふ。
「私は神様です」
決まった。
「神様ってなんだ! 名を名乗れと言っているんだ!」
えっ?
そっか。神様って分かんないか。やべっ。すごいこっちを怪しんでいる。助けてアスカさん…………ダメだ! あいつ人見知り発動してやがる……
「あー、ごめん。俺の名は神木ハヤト。ハヤトって呼んでくれ」
「…………」
だめだ。全然警戒がとけてない。もうだめかも。帰りたい。
「わ、わたしはアスカです。あなたと仲良くなりたいだけなんです」
無意識に俺の服をつかんだままアスカが震えた声で話しかける。
「お前たちが何者かは分からないが獣人ではないみたいだな……」
少女が怪訝そうな顔で、じろじろとこちらを見る。
「……一つだけ聞かせてくれ……その……アスカといったか……? お前が身に着けているその布はなんなのだ? すごくかわいい形をしているな」
アスカの顔がぱっと明るくなる。そして俺を見る。
あの野郎、どや顔決めやがった。
「これはねっ、スカートとブラウスを合わせた私一番のお気に入りなの!! あなたこのセンスが分かるなんてやるわねっ! 名前はなんていうの?ねぇ! 名前は!?」
「おいっ、近い、近づくな! 私の名前はノアだ。アスカ離れろ」
「ノア! 可愛い名前ね。ってか何その服? あなた女の子なんだからもっといい服着なさいよ!」
アスカのやつもう敬語が取れてやがる。よっぽど嬉しかったんだな。でもこのままじゃ話が進まない……
「あーー……ノアだっけ。俺たちは……」
「貴様と話をするつもりはない」
「…………」
泣いてもいいですか。
「あの……ノア? ハヤトの話も聞いてあげたら? さっきも言ったけど私たちはあなたの力になりたいの」
「そ……そうだな。なんかすごく泣きそうな顔をしているしな。もう一度聞く。お前らは何者で、何のためにここに来たんだ」
「えっと……俺たちは、君が泣いているの遠くで見て……事情聞こうと……」
「なっ!? 私は泣いてなどいない! きっ、きっ貴様の見間違えか何かであろう!」
ノアは顔を真っ赤にし、否定しているが目が泳いでいる。
分かりやすいな
「き、きさまっ、何をにやついておる、切るぞ」
嘘でしょ! 剣を抜いちゃったよ、この子! やばい! 助けてーカミサマー……
**********************
「……」
ノアから事情を聞いたわけだが
俺は人類の今の境遇に言葉を失ってしまった……
隣でアスカは涙を流している……
つまりこうだ。この星の獣人は知能が人間とほぼ同じらしい。こうなると人間は獣人の完全なる下位互換になってしまったと。そして現在、人間は獣人から下等種族として差別され、その結果、人間は住む場所も
「お、おいっ! なぜアスカが泣くんだ。」
獣人を生んだ張本人だからな……責任をかんじているのだろう……
しかしこれを解決するためにはどうしたらいいんだ……
俺たちの反応を見て、安心したのだろう。ノアの顔がほころび立ち上がった。
「二人が敵でないことは分かった。家に招待しよう」
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