第22話 デート②
映画を見終わった俺たちは、ショッピングモール内のカフェで昼食をとりながら感傷に浸っていた。映画の内容は想像以上に良かった。危うく涙を流すところだった。七海は号泣していたが。
「よか”った”で”すっ……最後小百合が報われて……」
「……そうだな。いい映画だった」
小百合というのは映画のヒロインのことだ。
多くの女性はこの小百合に感情移入して映画を視聴すると思う。
この映画は、小百合と幼馴染みの男――翔太――と翔太を狙う女性達とのラブロマンスだった。
小百合は、幼い頃から隣に住む翔太と家族ぐるみで付き合いがあり、良く小さい頃から一緒に遊び、将来結婚の約束をするほど仲が良かった。
しかし、お互いが成長するにつれて男女を意識し出した事で、徐々に疎遠になっていく。高校生になる頃には全く話さなくなっていた。
ある日、翔太が同じ高校のいじめっ子で有名な生徒達複数と付き合ったという噂が小百合の耳に届く。小百合は翔太のことが好きなので内心モヤモヤしながらも、どうにか翔太に話を聞こうとタイミングをはかっていた。
結局学校ではその生徒達に囲まれていたせいで翔太と話せなかった小百合は、直接翔太の家を訪ねることにした。家に着き昔のようにそのままインターホンを押さずにドアを開くと、家の中から付き合ったと言われる女子達と話す翔太の声が聞こえていた。
小百合は気付かれないように家に入り声が聞こえる部屋の前で息を潜める。
すると、どうやら翔太は脅されて付き合うことになったと小百合は知った。しかもその原因は自分であり、翔太はこの女子達から小百合を守るために身を差し出していたようだった。
小百合は内心『裏切られた』という気持ちを抱いてしまった自分を嫌悪した。同時に男性である翔太が女性の自分を『身を差し出してまで』守ってくれたことを嬉しく思った。
しかし相手はいじめっ子。弱い自分ではどうにも出来ないだろう。しかし早くしないと翔太を無理矢理奪われてしまう。
小百合は途方に暮れていたが、その時、将来翔太を守るために弁護士を目指して勉強していた男性保護法についての項目を思い出す。
小百合は直ぐにスマホで録音を始めると状況証拠を捕らえ警察に連絡。結果、会話から向こうが脅していたのは明白だったので法律の勉強をしていた小百合の努力が実った形で事件は終焉を迎える。
騒動の後、小百合は泣きながら翔太に怒りそして感謝と謝罪をした。
翔太は小百合を守るために身を挺していたが、誰よりもその事を理解した小百合は『翔太を守る』と心に決め、告白と同時に苦しむ男性を減らす助けをするために本格的に弁護士を目指す。
数年後。小百合は一男一女をもうけながら弁護士として活躍。夫翔太と幸せに暮らしていた。
――Fin
という内容だった。
翔太の設定ちょっと変じゃない?とか、此処おかしくない?とかは少し思ったが、それを含めて泣けるいい映画だった。これはヒットしますわ。
「小百合も良かったし、翔太も良かったな……」
「そうですね……いい話でした……」
「二人ともずっと想いは一緒だった」
「そういう数十年越しのハッピーエンドが女性は好きなんです」
「分かる。エモいなぁ……」
「エモいですね……」
感傷から抜け出すにはまだ時間が必要だった。
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