第7話 アルカイックスマイルとは何ぞや?
「うわあああああ!!!!」
夜の山に響く断末魔の声。
外はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
千切られた手足がそこら中に散らばっている。
ヴワアアアアアアアアア!!!
イヤアアアアアアアアア!!!!
オレは内心悲鳴を上げまくっていた。
再三言うようだが、オレはグロいのは苦手なのだ。
それに心が三十過ぎだと言っても平和な日本で過ごしていた人間にスプラッタ現場への耐性などあるはずがない。
むしろ異世界転移した瞬間からすぐに得物(モンスターでも人間でも)を殺せる奴の方が心配になるというものだ。
どこのバーサーカーの星出身なんですか? なんつって。
それはそうと村民の怒りを発散させるかのようなパーティーはいまだに続いている。
その中で唯一無傷で残されているのが山賊のリーダーだった。
ヒイと情けない悲鳴を上げて地面に転がっている。
その足は内またになっていた。
少しでも刺激を加えれば確実に漏れてしまうのだろう。
ええ、いやだなあ。
オレはジト目になる。
誰が好き好んで野郎の漏らす現場を見たいと思うのだ。
絶対にお断りだ。
話が逸れたが、奴から情報を聞き出さなくてはならない。
それはオレにしかできないことだった。
オレは仕方がなしに山賊のリーダーの下へと向かう。
オレは事前に、村民の皆さんにはリーダーだけは傷つけないようにと命令していた。
誰かひとりは必ず生かして情報を引き出さなければならないからだ。
そうとなれば一番偉い奴を残すのが定石だろう。
オレはリーダーに近づくと周りで行われているスプラッタの恐怖で頬が引きつらないように努めてにこやかな微笑みを称えた。
いわゆるアルカイックスマイルというやつだ。
え? アルカイックスマイルとは何ぞや?
ググれk……すみません、石を投げないで下さい。
あれですよ。仏様のような笑顔のことです。
「やあこんばんは。あんたがリーダーだよね?」
「う、うわあぁああ!!」
リーダー(と思われる人)はオレを見るなり後ずさる。
まるで化け物のを見るかのような反応をされるとさすがのオレも傷つくのだが。
……ああ。オレの後ろにいる女性を見て怯えているのか。
オレは後ろについてくる女性キョンシーを見た。
大人のお姉さんという言葉が似合う彼女は、死後一日というところできれいなままである。
だが死んだはずの(もしくは殺したはずの)女が立っていたらそれは怖いよな。とオレは納得した。
召鬼道士の力を得てから嫌でも恐怖耐性が付いてしまったようで、もう普通の人が怖いと感じるものが分からなくなってきている。
どこかで一度軌道修正しないと、どんどんダメな方に進みそうだ。
それはまたおいおい考えるとして、今回たくさんの村人を呼び起こしたことで一つ分かったことがある。
新鮮な死体で喉や頬の筋肉が傷んでいない場合、会話が行えたのだ。
後ろについてきているお姉さんを起こした時、彼女は確かに言葉を発した。
言葉と言ってもカタコトで「ハイ」とか「ワカリマシタ」とかかなり断片的な言葉だけだが。
死体から情報を引き出せるかと思ったが、残念ながらお姉さんからは何の情報も得られなかった。
生前の記憶がないのか、意志があるのか、分からないことはまだまだあるが、新鮮な死体であれば言葉を話すことが可能と分かっただけでも良しとしよう。
もしかしたら使役する死体のレベルが上がればもっとしゃべれるようになるかもしれないし。
乞うご期待、だな。
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