僕の世界を紹介しよう

熊のぬい

世界

この世界は、ただ一柱の神が作り続けるぬいぐるみが生きる世界である。

皮膚の代わりに布が当てられ、血の代わりに糸がつなぎ合わせて、内臓の代わりに綿が詰められていた。

神から与えられた役目を全うするまでの間だけ彼らは生きられるので、食事は必要なかった。

そして、人間と呼ばれる存在はおとぎ話の本の中にしかおらず、彼らはその存在を想像上の生き物だと思っていた。


けれど、一人の少女が森の中で倒れていた。いつから居たのか、誰も知らない。そんな彼女を最初に見つけたのが、熊の木こりだった。

木こりは、神が作った新しいぬいぐるみだと思い、一回り以上大きな彼女を介抱した。


目を覚ました彼女に木こりは話を聞いた。そしてなんと、彼女は、別の世界から逃げてきたというのだ。

そこで初めて、彼女がぬいぐるみで無いことに気づいた。


彼女の存在をどうすべきか、犬の警察官に尋ねた。警察官も初めての事に戸惑うが、人形に聞いてみてはどうかと提案した。

人形は唯一この世界で神の言葉を聞ける存在である。


彼女を連れて、人形の家に訪れた。人形は彼女と似たような作りをしていて、青い目をしている。

人形は彼女を見て本当に存在していたと、驚きを隠せなかった。


人形は神に彼女をどうするべきか、伺った。

神は人形を依り代として顕現し、彼女に三つの選択肢を与えた。


1つ、元の世界に帰ること。

2つ、人間として生きること。

3つ、ぬいぐるみとして生まれ変わること。


少女にとって、元の世界に帰ることは死よりも苦しいことであり、しかし、人間として生きるにはこの世界は生きづらい。そして、何よりも彼女は人間として生きることに飽き飽きしていた。

だから、彼女は生まれ変わることを選んだ。


神はその選択を了承して、彼女をぬいぐるみとして生まれ変わらせた。

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