クソ真面目
「んん…んんんんん!」
私は今、椅子に縛り付けられている。
小柄な男のその両脇には、大柄な男が二人、その筋肉を見せつけるように来ていた。
その小柄な男は、口のガムテープを乱暴にはがした。
「痛っ…なんなのあんたたち!こんなことして何がしたいの!?」
「おっひょひょひょひょひょ!」
突然、何に悦を感じたのかわからない間で、その男は笑い始めた。
「僕…僕、頑張ったんだ!君がこうして、ここに来ることも調べて、こうして人も雇って…」
狂気ともいえる歪んだ純愛をぶつけるかのごとく、彼は言葉を連ねた。
「僕は今日!君を!救い出すんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あまりの大声に、室内の金属が反響した。
その言葉たちはあまりにぐちゃぐちゃで。
その言葉たちが、私の体を寒気で覆った。
「す、救い出すなんて…襲うの、間違いじゃないの?」
精一杯の強がりで、そう言い返す。
男は一瞬、間の抜けた顔をして。
「…あは」
「?!」
「あははははははははははははははははははははははは!あーっはっはっは!!!!!!」
気が狂ったかのように、そう高らかと笑った。
「流石…流石はクソ真面目の生徒会長サン!学校の裏掲示板なんてわかりっこしないよなぁ!」
そう言って、また高らかに笑い始めた。
裏掲示板…?
心の中で、そう反復する。
1年のころ、少しだけ噂として流行っていた都市伝説だ。
卒業済みの先輩らがその後の学校を知るために立ち上げた掲示板が、気付けば、暗い噂話が飛び交う裏掲示板のようなものになってしまったという噂だ。
「でも…あれは噂じゃ…」
「ただの噂なら、こんなこと言うか?言わねぇよな!!!あるんだよ!裏掲示板も!
また高笑いをする彼を見て、私は青ざめた。
私を…監視?
そんな気配はなかったし、その監視してる人がもし、その掲示板で私の私生活を実況とかしているのなら…?
考えるだけで、体が凍った。
「…にしても…」
そう言い、先程薄着にされた私の体をまじまじと見られた。
「流石会長!そのわがままボディが煩悩を刺激しまくる!」
あまりの恥ずかしさに身をよじらす。
「ああ…いい…いいよ、それぇ!」
「うっ…」
どうやら、彼は女に辱めを受けさせることに快感を覚えるらしく、私の顔が好みにはまったらしい。
「いや…助けて…」
「はあ…はあ…一体、どこに」
違和感に気付いたのは、待ち合わせ場所で1時間待っても来なかったことだ。
メールをしても、電話しても一切の連絡がつかなかった。
「っくそ…俺が、家まで迎えに行っていたら…」
と、過ぎたことを悔いる。
何かあったときのために入れておいたGPSアプリもまるで機能していなかった。
「手遅れにだけは…ならないでくれ…」
と、そんな感じの正義のヒーローみたいな妄想をしながら、悠々と彼女の元に足を運んだ。
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