機能重視の新装備
【マスター、アリス様の下着が完成いたしました。服は明日の朝にはお渡しできます】
「うん、アリスさんに渡して……ってここで見せなくていい!!」
服を縫うと言っていたパイさんが下着を手にして入ってきたので、ジャックさんが慌てて入れ替わるようにして部屋から出ていく。私も居たたまれないけど、美少女ハーレムマスターの割に初心な気がする。
「御主人様もまだ十八だもの……思春期真っ盛りよねぇ?」
「えっ!? 冒険者になったのが五年前でしたよね? そんな子供の頃から……」
まさかの同世代だったとは。幼い頃から波瀾万丈な人生を送るなんて、貴族令嬢には想像もつかない話だ。……とは言え、私もローリー様に振り回されていたので、ちょっと普通とは言い難いけども。
パイさんが作ってくれた下着は、ジャックさんが指定した通りシンプルで地味だった。ショコラさんはつまらないと唇を尖らせていたが、下着として機能してない痛々しいデザインなんて着る意味があるんだろうか。
「アリスちゃんは新婚さんなんだから、着けてあげればダーリンも喜ぶと思うの♪」
「帰ってこないのに見せられる訳ないじゃないですか」
「そぉ? じゃあ、代わりに御主人様に見せてあげましょうよぉ♪」
何で!? それこそ人妻がやっちゃダメなやつ!!
しつこく押し付けられそうになるショコラさんのイチオシを何とか躱し、新しい下着をさっと身に着けると、パジャマの上を着直して部屋の外のジャックさんを呼んだ。
本当はズボンも穿きたいところだけど、紐で結んでも緩んできちゃうのよね……いくら男性で剣士だからって、ジャックさんもそこまでがっちりしてないはずなんだけど、きっと着過ぎててヨレヨレなんだわこれ。
「アリスさん、これ古いベルトなんだけど、寝る時以外はつけててくれ」
戻ってきたジャックさんにボロボロのベルトを差し出され、やっぱり冒険者って身なりを気にしないんだなと遠い目をした。他国では勇者と呼ばれているグラディウスさんですら、ちょっと小汚かったんだもの。実質、人間は男一人しかいないパーティーではお察しである。
「それで、明日からの予定だけど。俺たちは今まで通り上級悪魔――『ヴァルゼブル』を追って地底へ向かう。あんたの旦那と目的が同じなら、そのうち行き当たるはずだ。
アリスさんはどうする? 初心者だし、この辺りの瘴気は居るだけで辛いだろうが、魔法の部屋に籠るって手もある。もちろんレベルアップがしたいなら出てきて一緒に戦ってもらうけど、なるべく敵に狙われないよう配慮はするし……」
「それって、連れて行ってくれるという事ですか?」
「放り出す訳にはいかんだろ」
ああ、グラディウスさんたちの時と同じく、厄介事を背負わせてしまった。申し訳ないけど、ありがたいのも確かだ。
「できるだけ早く、足手纏いにならないよう頑張ります!!」
前に進むしかないのなら、全力疾走してでも最速でゴールを目指すのが今の私にできる事。それに不謹慎だけど、ほんのちょっとだけわくわくしている自分もいたりするのだった。
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