第29話

 肥大した自意識と、低い知名度の乖離に、いまだに、慣れない。


 街を歩き、水戸の下町と言うのは、那珂川を上がって上町と、吉田古墳を下って下町と。


 とはいえ、今栄えている部分は、確か、江戸時代には、湖だったはずなので、本来の水戸の形というものから、遠く離れてはいる。


 梅祭りでにぎわう、と言っても、この時間には、人がいないので、また君か、と声をかける。


 そもそもなぜ、別の人間の形をとる。


 確認してみたが、君が借りているその人間は、今大阪にいるはずで、水戸にはいないはずだ。


 その姿でなければ私が気にも留めないと言うことで、そういう姿をとっているのはわかっている。


 正体を表せ。


 そもそももう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る