第14話 アルト達は襲撃される
その翌日僕達はギルドマスター『マルク』さんの言葉通り依頼を受けていた。
「今日は薬草採取ですね」
「そうだけど……、どこに向かってるの? 」
「群生地です」
僕がレナに聞くと笑顔で答えた。
どうやら役に立てるのが嬉しいようで、昨日よりも今日の方が機嫌が良さそう。
そんな彼女を見ながらも
レナの背には
それを追いながらギルドで
「なんだか不自然なくらいに魔物と出会わないな」
「……そう言われればそうですが」
「この周辺はいつもこうなのか? 」
「私もこの町に来てそれほど時間が経っているわけではないのでなんとも」
レナは少ししょんぼりとする。
索敵や探知には引っ掛からないし大丈夫だとは思うのだが、気になるな。
いやしかし、もしかしたらこれが正常なのかもしれない。
というよりも僕自身——この前の戦闘を除けば——魔の森以外で魔物に出会ったことが無いから何とも言えない。
いや魔物のような人にはあったことがあるが。
「つきました」
考え事をしている間に着いたようだ。
顔を上げて
そして僕達は薬草採取を始めるのであった。
★
薬草も取り終え帰ろうとした時ふと、体にねばりつくような嫌な感覚に襲われた。
これはっ!
「レナ! 」
すぐさま彼女を引き寄せその場から離す。
シュッ!
彼女がいた場所に一本の矢が突き刺さる。
「これは?! 」
「襲われている! 」
すぐにスキルを発動させて矢が飛んできた方向を見る。
同時に魔法を発動させた。
「
巨大な青白い魔法陣が地面に描かれそこから冷気が立ち昇る。
瞬間辺り一帯を白く染めて凍り付かせた。
すると「くそっ! 」「何だこれ! 」「いてぇ! 」という言葉が聞こえて来た。
「山賊か何かか? 」
「かもしれませんね」
「捕まえた方が、いい? 」
「賊ならば
「了解。
レナの言葉に魔法を発動させてまずは視界を奪う。
集団は五人ほどであまり多くない。
ならばこの程度の魔法で十分だ。
「そろそろ大丈夫だろう」
「声が聞こえてこなくなりましたね。しかし
レナの言葉に苦笑で返す。
きちんと発動させることができると対象物の魔力を奪い弱体化させる。修得難易度も高くなく、お手頃な弱体化魔法だ。
しかしその効果は強くない。よって通常は闇属性魔法習得のための初歩程度にしか使われないが、ことこのスキルで効果が増大された
薬草の群生地から離れた場所。
そこには五人の男達が、顔に真っ暗い闇を
力強くなく、弓を持ったレナを襲ったであろう人物も見える。
しかしながら全員装備が良い。
どういうことか考えているとレナが声を上げて僕の方をみた。
「この方達は! 」
「有名な盗賊? 」
「いえ冒険者です! 」
それを聞き驚く。
冒険者が盗賊まがいの事を?!
どういうこと?
「……そこにいるのかよ」
一人の男が口を開いた。
答えるべきか悩んでいると勝手に続けた。
「全く貴様らのせいで
「本当だ」
「どういうことだ? 」
思わず聞き返すと力ない声で答えた。
「この町を護っているのは俺達だ。ずっとそうだった」
「それが最近来たばかりの
「仕事も、人気も何もかも」
「ったく何で俺達じゃなぇんだ」
その身勝手な言い分に
え? つまり
ありえない。
確かにこれまで、そしてこれからも町を護っていくのは彼らだろう。
僕やレナは単に立ち寄っただけだ。
一時的に
「レナ。冒険者にこういう奴らは多いのか? 」
「……残念ながら少なくありませんね。この町にはいないと思っていたのですが……、残念です」
レナはそう言い
「この状態で動けないだろう」
「誰か呼んできましょうか? 」
「それが一番——!!! 」
言いかけた瞬間体がざわめく感じを受けた。
なんだこれは?!
すぐにスキルを発動させて
すると物凄いスピードでこっちに向かっている魔物を探知した。
「レナ離れるぞ! 」
「え?! 」
「早く! 」
そう言いレナの手を引く。スキルを前にして魔物が来ていることを伝える。
ドンドンドンドンドン!!!
足音が聞こえてくる。
俺達はすぐに構えた。
グチャリ。
賊冒険者達を踏みつぶす。
感触で下に何があるか分かったのか、頭を
冒険者達の表情は見えないが、ウルフが何をしようとしているのか気が付いたのだろう。
必死になって逃げようとする。
「こ、こいつ」
「俺達を食おってのか?! 」
「くそ体が……」
「仕方ない」
幾ら自業自得とはいえ、流石にこのままだと目覚めが悪い。
すぐに魔法を解除する。
しかし逃げる間もなく彼らはウルフの腹に消えた。
耳を塞ぎたくなるような異音がする中たじろいだ。
ちらりとレナを見ると口に手をやり顔を青くしている。
このままじゃこっちも襲われかねないな。
耳を
すぐにスキルを発動させて幾つか魔法を設置する。
そして速度の速い魔法を放つ。
「
「Gru? 」
足を貫くように攻撃する。
俺の攻撃に反応しウルフがジャンプで避けた。
しかし空中に設置した
ドンドンドン!!!
音と共にウルフが地面に叩きつけられる。
体を上げる前に追撃だ。
「
空中に展開した魔法が続いて発動。
巨大な氷の槍が、ウルフの頭部を貫いた。
★
「何だったんだ? 」
「分かりません。しかしウルフにしては大きすぎるかと」
ウルフの残骸を回収しながらレナに聞く。
まだ少し青い顔をしているが仕方ないだろう。
「ならウルフの上位種? 」
「有り得ますが、今まで見て来たどのウルフの上位種よりも大きく見えますね」
「正体不明か」
ぽつりと呟きながらも異空間に仕舞い込んだ。
レナにはそう言うが俺には一つ心当たりがあった。
魔の森からのはぐれである。
残念ながら魔の森でもこの大きさのウルフは見たことがない。
魔の森から出て、この森周辺のどこかに住んでいたという可能性。
こうして俺達はギルドに戻るのであった。
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