「一族の恥さらし!」と言われ追放された僕はレアスキル【叡知の魔導書】で無双する~初級魔法一つしか使えなかったスキルが魔石で覚醒し空想魔法を使えるようになりました~
蒼田
第1話 アルトは追放される
「アルト! お前をこの家から追放する! 」
「出て行け! 一族の恥さらし! 」
その言葉に僕は
え? 追放? なにを言って......。
口をパクパクさせていると、やたら
「
それを聞き真っ白だった頭に血が上る。
赤い
「母上の事を馬鹿にするな! 」
「それはお前が無能なせいだろうがっ! 」
顔を赤くし怒る父上に一瞬
しかし母上の事を馬鹿にされて僕も黙ってはいられない。
「僕のスキル『
「今日、エルドが『賢者』スキルを授かった」
父上が言うと僕の顔から血の気が引く。それを感じてか隣の少し小太りな弟『エルド・レギナンス』が
そんな、賢者スキル?!
「これでわかっただろう? このレギナンス伯爵家は代々賢者スキルを発現させた者が代を
「この伯爵家は俺が盛り上げて行くからよ。安心しな」
ニヤニヤとしながらボソボソと呟くと片手に黒い炎を出す。
あれは
賢者スキルを手に入れたというのは本当なのか。
「それとも一層の事俺の
更に炎を大きくさせて顔を
しかしそれを父上が手で止める。
エルドは不快そうに父を見上げるが、それを
「エルド、やめておけ。わしも今すぐここで火あぶりにしたいのは山々だ。しかし流石に
「ちっ。まぁいい。これからは俺が伯爵家の
ははは、という不快な声が部屋に響く。
こうして僕『アルト・レギナンス』は、家名を捨てた。
★
カタコトと音が鳴る。
目に映る星降りの
もうレギナンス伯爵領は出たようだ。
「こんな時も勉強ですかい? 」
「気を
窓から正面の騎士に目を移して答えた。
部屋を片付けて出て行けと言われたので本を持って出て来たわけだ。
これらは母上が買ってくれた大事な本。
母上は「知識は裏切らない」と言っていたけれど、今回ばかりは信じることが出来そうにない。
「はぁ。それにしても
「仕方ないよ。エルドに賢者スキルが発現したんだから」
「神様も不公平なことをなさる。珍しいスキルとはいえ、扱い方すらわからないちんちくりんなスキルをアルト坊ちゃんに渡すとは」
「こらこら。流石にそれはまずいよ」
苦笑いを浮かべながら「
すると目の前に一冊の魔導書が浮かび上がった。
「
唱えると目の前に金色に光る魔法陣が浮かび上がり、光球が一つ浮かび上がった。
それを見て騎士の男は軽く
「いつ見ても見事なもので」
「それは
「違いますよ。魔法が使えない俺達からすれば
「そうかな? 」
「ええ、そうです。もしこの
また
彼は母上がレギナンス伯爵家に
僕が小さな頃から世話をしてくれている人の一人だ。
彼が言っている事は分かる。しかし、ことレギナンス伯爵家においてはそのようなことは
不本意ながら、本当に不本意だがエルドに賢者スキルが発現してしまった以上僕が出来ることは殆どない。
可能性があるのならば、この希少な
「——って聞いてますかい? アルト坊ちゃん」
「聞いてるよ」
本当か? と疑うような顔を僕に向ける。
「ったく何で軍部の旦那がそのことを理解していないんですかね? 理解していりゃぁ追放じゃなくて軍に配属させると思うんですが」
「軍部と言っても事務方だからね。馬に乗って戦場を
「はは。これはうめぇ。確かにあの体で馬は乗れねぇですね」
「そう言う意味じゃないんだけどね」
僕がそう言うと彼は続ける。
「奥様方のいざこざは置いておいても、剣を使えるアルト坊ちゃんを追放するとか馬鹿じゃないですかい? 軍に入って、それこそ功績を上げればあのデブの
「……剣が使えるっていっても教養程度だから」
「何ご
「それでもだよ。レギナンス伯爵家では剣は意味をなさないから」
肩を
騎士の男も気が付いたようで顔を引き
「......どうやら着いたようで」
そう言いながら扉を開ける。
どんよりとした暗い雰囲気が馬車の中に入る。
この先は危険地帯。
せめて恩ある彼らをこれ以上危険に
「……アルト坊ちゃん」
悲痛そうな顔を騎士達が僕に向ける。
そんな顔をしないでよ。僕も悲しくなるじゃないか。
そう思っていると一人の騎士が前に出た。
「アルト坊ちゃん。これを」
「携帯食と短剣? 」
「ええ。ここは魔の森でございます。誰も食事を作る者はおりません。なので——」
「……ありがとう。嬉しくいただくよ」
カラ元気だけど、彼らに笑顔を浮かべて受け取った。
不安がないと言えば嘘になる。
怖くないと言えば嘘になる。
だけど僕が森に入らないと彼らが処罰を受けることになる。
「皆。元気で」
「可能なら。次お会いできる日をっ! 」
「皆の者。敬礼!!! 」
バッと音がし、つられて僕も敬礼した。
少し時間が経つと、その
そんな彼らに手を振り森へ向く。
そして僕は魔の森に足を踏み入れた。
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