第414話 つまり、俺も魔力を補充してみるってこと

 俺の魔力量はミハエルくんよりも多いはずなので、飛行船を動かすくらいまでには、魔力を補充することができると思うんだよね。

 でも、バルトとレイが心配するのもよく分かる。ホリーちゃんが同じことをすると言い出したら、俺も絶対に止めると思うからね。


「どうしたものか。ラギオスたちに補充してもらうことはできるかな?」

『できると思いますが……やってみますか?』

『いいじゃん、いいじゃん、やってみようよ!』

「ティアにそう言われると、なんだかすごく不安になってくる」

『なんでよ!』


 ほおを膨らませたティアの機嫌を取りつつ、試しにラギオスに魔力を補充してもらう。

 魔晶石に手を当てて、先ほどのミハエルくんと同じように魔力を送り込んでいるようだった。

 だがしかし。


『うーん、うまく魔力を送り込むことができませんね。どうやら魔力の質が違うようです』

「そうなんだ。そんなことってあるんだね」


 そう言いつつも、なんとなく理由が分かったような気がした。ラギオスたちが使っている魔力は天界から直接、送り込まれた魔力を使っているからね。地上で俺たちが使っている魔力とは性質が違うのだろう。残念。


『ぐぬぬ……あたしもダメみたい』

「それじゃ、他のみんなも無理だろうね。やっぱり俺が魔力を補充するしかないか。それか、飛行船をあきらめてラギオスの背中に乗って帰るかだね」

「我々としてはラギオス様の背中に乗って帰りたいところではありますね」


 そんな俺たちのやり取りを聞いて、ラギオスに乗った空の旅を想像したのだろう。ホリーちゃんの顔色が見るからに悪くなっている。

 俺がしっかりと支えるから大丈夫だとは思うけど、それでも保証はできないのは確かだ。


「そうだな、ひとまず俺も魔力を補充してみよう。もちろん、無理をするつもりはないよ。ラギオス、ティア、俺の残りの魔力量が半分くらいになったら止めてほしい」

『分かりました』

『任せてよ』


 これならバルトとレイも安心だろう。念のため二人の顔を確認すると、了承のうなずきを得ることができた。これで大丈夫。


「師匠、よろしくお願いします」

「ルーファス様、よろしくお願いいたしますわ」

「やるだけやってみるよ」


 どうやらホリーちゃんは、吹きさらしの状態で空を飛ぶことがものすごく怖いようである。これは強行すると、泣いちゃうかもしれない。あと、服が大変なことになるかもしれない。忘れがちだけど、俺たちまだ七歳児だからね。


 大きな魔晶石に手を当てて魔力を送り込む。スッとまるで吸い取られるかのように、魔力が魔晶石へと流れているのを感じる。

 古代人もこうやって魔力を補充していたのだろうか。かなりの魔力が必要みたいなんだけど。代わる代わる、みんなで魔力を送り込んでいたのかな?


『主よ、そろそろ魔力量が半分になりそうです』

『あと十数えるくらいね』

「そこまで正確に分かるのか。……よし、このくらいかな?」


 ラギオスとティアの指示にしたがって、魔力を送り込むのを中断する。まだまだ余裕があるのだが、これが俺の魔力の残り半分みたいだね。

 魔晶石は鮮やかな緑色の光を放っている。結構な量の魔力を補充できたみたいだ。


「ルーファス様、大丈夫ですか?」

「問題ないよ。まだまだ大丈夫」

「それならよかったです」


 ホッとした表情を見せるホリーちゃん。ラギオスに乗るのは遠慮したいけど、俺に無理をさせてまで飛行船にこだわるつもりはないみたいだ。

 魔晶石を確認するミハエルくん。その表情は明るい。


「師匠、これなら飛行船を飛ばすことができそうです」

「それならよかった。飛行船での移動なら、足元もしっかりとしているし、そこまで怖くはないんじゃないかな」

「そうだと思います。窓から下を見なければ大丈夫です」


 そう言えばミハエルくんも高いところは苦手だったな。だから熱心に飛行船を動かそうとしていたのか。単なる好奇心からだと思っていたのだが、どうやらそれだけではなかったようである。


「残す問題は、壁の扉が開くかどうかだね。この古代遺跡に動かす動力は残っているのかな?」

「それについては大丈夫だと思います。実際に、気象を操る魔道具が動いていましたからね。どこにあるのかは分かりませんが、動力はまだ使えるようです」

「言われてみればそうだったね。それならあの魔道具を放置していても、いつかは動力がなくなって、勝手に止まっていたということか」


 それなら別に無理して止める必要はなかったのかもしれないな。ガーディアンが遺跡を守っていたことだし、危険なことに首を突っ込む必要はなかったのかもしれない。

 そう思っていたのだが、どうやらそうでもなさそうだ。


「確かに師匠の言う通り、いずれは止まっていたと思います。ですが、それまでにはコルネット公爵領だけでなく、エラドリア王国全土が雪に閉ざされていたかもしれません」

「それもそうか。それじゃ、俺たちがやったことはムダではなかったってことだね」

「ムダどころか、すごいことをやり遂げたのだと思いますよ。きっとみんなからほめられるに違いありません」


 ミハエルくんが目を輝かせてそう言った。うん、そうだね。そうだったらいいね。なんだろう、なぜだか悪い予感がするぞ。

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