第34話 そして私は不死になった 2

 「モンスターがいたんだよ!!」

 カーヤはこれでもかというくらい大きな声で叫んだ。

「は?モンスター?」

 ナスカは耳を疑い、思わずカーヤの方を向く。

「そう!モンスター!ちっこいんだけど、今までで見た事ないような生き物なんだ!」


 こんなにも必死に訴えかけるカーヤをナスカは初めて見た。


「ちょ!いっかい来てみろよ!!!」


 そこまでいうなら…と、ついていくことにした。


※※※※※


「こっちこっち!」


 黄昏たそがれ時の海は、逆光で黒く見えた。


 空はすっかり濃いオレンジ色に染まっており、鶏卵の黄身にも似た太陽が水平線に沈みかけている。


 カーヤはナスカの手を引きながら、海沿いを小走りで進んだ。


 海沿いを進んだ先には海蝕洞かいしょくどうの岩場がある。


「岩場は親から行っちゃダメって言われてるじゃん!」


 ナスカは義両親のことを『親』と呼んでいる。


 その呼び方をするのは、ナスカが義両親に対して心を開いていない事の表れだとカーヤは気づいていた。


「大丈夫!いつもみたいに俺がかばってやるって」


 カーヤは元気にそう言う。


「え…うん」


 いつからだろうか。ナスカはカーヤに恋心を抱いていた。


 海のように寛大で優しい心。無垢で純粋な冒険心。好きなものにトコトン打ち込む情熱。そして周りから好かれるカリスマ性…。


 淡白な自分には無い魅力ばかりのカーヤに、ナスカは惹かれていたのだ。


 しかし、自分の気持ちに対して素直になることはできなかった。


 感じてはいたが、あえて気づかないようにと、無意識のうち、いつしか自分の心に蓋をしてしまっていた。


※※※※※


 洞内はそこまで奥行きがある訳ではなく、片方の洞口から向こう側の海景色が見えたため、ナスカも抵抗なく入った。


「ええ?どこ?」


「えーと確かこのへんだったな」


 ナスカはカーヤと共にぽっかりとあいたドーナツのような海蝕洞に入ると、地面を見渡した。


「あ、これだ!!」


 カーヤは力士がとる四股しこのような姿勢になったまま、地面を見つめて動かない。


「んん…?」


 ナスカもカーヤが見つめる先を見つめる。


 そこには──────────

 

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