第32話 牢屋から解放された古舘でありますが心休まることなくドラゴンの悪行を実況する羽目になりました!

「見てください!!あれ!」

 大急ぎで地下から出てきた古舘とショーンKが目にした光景は凄まじいものだった。

「街が…」

 地下牢の入口は高台にあったため街全体が見やすい。

 古舘達は柵に走り寄って両手を手すりにかけ、街の様子を確認した。

 ドラゴンが見える。滞空して今もなお火球を吐き続けていた。

 そこら中の建物が燃えさかっており、最初に古舘がショーンKと共に入ってきた門付近は火の海と言っていいほどの惨状だった。ここからでは距離があって見えないが、死者も多数出ているだろう。

 今この瞬間もドラゴンは火球を吐き続けている。

「なんということでしょうただいま古舘伊知郎空想の生物であるドラゴンを目撃しておりますそして遠目に見える王国街我々が帰ってきた際通った門も、道も、店も今は地獄のような様相を呈する阿鼻叫喚の惨状であります!!!」

「実況しなくてよい!!!」

 ショーンKが唾を飛ばしながら物凄い剣幕でツッこむ。まあ真っ当な反応であろう。

「にしてもいきなりだな、ドラゴンなんて!現状対応はどうしているんだ!?」

「大砲を準備しておりますが時間がかかるため現状は弓矢で対処しています!!」

 兵士達が弓矢で応戦しているようなのだが、ドラゴンが怯んでいる様子はみられない。鱗が硬すぎて矢が通らないのだ。

 逆に火球を吐かれ、返り討ちにされているようだ。

「ガイコツの時もそうだが、弓矢は人にしか使えないな!大砲はどのくらいで放てるんだ!?」

「あと10分あれば!」

「10分か…。そうだ!ナスカは!ナスカはどうした!?」


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「来た!来た!!ついに!!!奴が来た!!本当に来た!!!!」


 ナスカは王宮を囲う城壁に背をつけ、ドラゴンから身を隠していた。


 実は彼女、よわい15ではない。


 いや、厳密に言うと


 彼女がそうなった理由ワケは今から50年前の出来事トラウマにある──────────


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