第4章 デート 第1節 第一関門突破

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 「いきなり降ってきちゃったね。」


 「ああ、ここは山が近いから、

よくあるんだよね。」


 「いわゆる”山の天気”ね。

風邪ひくいけないから、入んな。」



 沙恵さえは、

水色の大きい傘を、

二郎じろうの居る側へ差し出した。



 「ああ、あははは、ありがとう。

じゃあ、俺が持つよ。」


 二郎が傘を持とうと、

を握った時、少しだけ手が触れた。



 随分と、温かい手だった。



 沙恵は動揺を隠しながら、


 「あのさ、

先週行ったあの近所の焼き肉屋、

美味しかったと思わない?

二郎の顔見たら、

また行きたくなっちゃったんだけど。

おごるからさ、付き合ってくれない?」


 「ああ、いいよ。美味しかったよねぇ。

俺もそう思ってたんだ。

近いうち、また行きたいなぁって。

それじゃ、これから行きますか。」



 第一関門突破。


 沙恵は、計画した通りに進むことを祈った。

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