第1章 幼馴染な2人  第1節 会社を辞めたい服部沙恵(30)

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 「ふう。辞めたい。」


 毎日、後ろ向きに退職の事ばかり考えた。



 「まだ30だしな。

結婚もしたくないし。

続けるしかないか。」



 他人の目から見れば、

羨ましい、申し分のない、

ありがたい職場である。


 客観的に見れば、

感謝すべき状況だってことぐらい、

痛いほどわかってる。


 辞めたいと思うなんて、

親にも神様にも申し訳ないって、

心から思ってるつもり。


 しかし、沙恵さえにとっては、

会社というところは、

どうにも居心地の悪い、

早く抜け出したいだけの牢獄ろうごくに思えたのだった。

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