第2話 ぬいぐるみのケンサク

 どもっ、本屋で働く検索ケンサクシステムのアバター、ケンサクでっす。


 今、ぬいぐるみを検索ケンサクしてるんだ。


 人気の『タグ・ラブコメ』ちゃんにあげようと思ってさあ。


 い、いや、変な意味じゃないよ。


 最近仕事、忙しいだろ、それをねぎらうためさっ。


 あくまで、職場の仲間との関係を円滑にするためのモンだからさ。


 なんで、ぬいぐるみ、なのか、って?


 それがさー、大きい声じゃ言えねぇんだけど……


 ちょっと前に『タグ・悪役令嬢』ちゃんにさ、可愛い指輪をあげたんだよ。


 そしたらいきなり、バシッ、って投げ返されてさ。


「こーんな安物で、わたくしと婚約しようだなんて、プログラムバグでもわいてるんじゃございませんの!


 ハッ、これでわたくしおとしいれるつもりですのねっ。許せませんわ、キィィィ――ッ!」


 って、怒られたんだ。


 いや、婚約とか、おとしいれる、とか、全然そんなつもりなかったんだけど……


 指輪ってのが、まずかったかなあ、って。


 それで『タグ・転生』ちゃんには、ネックレスにしたんだ。


 そしたら、『タグ・転生(男)』の方が出てきちゃってさあ。


気色悪きしょくわるっ。こんなもんもらって、誰が嬉しいんだよ!


 あっ、これは魔法のかかった奴隷の首輪で、俺を社畜しゃちくにするつもりなんだなっ。


 てめぇ、トラックでひき殺すぞ、ゴラァ!」


 って、凄い勢いで怒鳴られて、ネックレス、ブチッ、って引き千切られたんだ。


 トラックでひき殺されちゃたまんないから、あわてて逃げたよ。


 ああいう、男も女もいる、タグ、には、ネックレスはまずかったかなあ、って。


 で、『タグ・ラブコメ』ちゃんには、ぬいぐるみにしとこう、って思ってさ。


 かわいいぬいぐるみなら、男でも女でもいけるだろ。


 ま、渡すときは、できれば女の子のほうがいいけどさ。


 どれがいいかな? ん、これなんかいいんじゃないか。


 世界でただひとつの、あなただけの手作りぬいぐるみ、だってさ。


 ちょっと高いけど、これなら安物、って言われないよね。


 これにしよう。


 お、あそこで食パンくわえて走ってるのは『タグ・ラブコメ』ちゃんじゃないか。


 こんちは、あのー、いつもお仕事、がんばってくれてありがとう。


 これ、俺からの感謝の気持ちです、どうぞ。


 おお! 嬉しそうに受け取ってくれたよ。笑顔が輝いてた!


 ぬいぐるみ作戦、成功だあ!


 よし、『タグ・魔王』ちゃんにも、ぬいぐるみにしよう。


 また、ぬいぐるみを検索ケンサクするぞー。


 あれっ、さっきあげたぬいぐるみ。


 ……もう売りに出てる……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る