第26話 二つの可能性

 ガルナタタンの目の前に、ステータス画面が現れる。

 しかしそれは、俺が見慣れている自分のステータスとはかなり見た目が違っていた。


 ◆◆◆ガルナタタン◆◆◆

 ◆愛称:ガルちゃん

 ◆種族:レキ=バクシーの眷属(ワーウルフ)

 ◆可能性α:0(±2)

 ◆可能性β:0(±2)


 これだけ、だ。


「なんだこれ。愛称? それと、可能性アルファと可能性ペータって……? どうやら眷属強化でポイントを割り振るのが、この二つみたいだけど」

「ばぅ?」


 俺が首を傾げて唸るのにあわせて、ガルナタタンも同じように首を傾げている。

 どうやらガルナタタンもこれが何かはわからないようだ。


「全く判断がつかないな。ただ、どちらか片方にとりあえず2ポイントとも振るのは決定だな。じゃないと変化があったとしてもどっちの効果かわからないし──ガルナタタンはどっちがいい?」

「ばぅ!」


 びしっとその短いお手々でステータス画面を指し示すガルナタタン。その爪先は可能性βを向いている。


「こっちがいいの?」

「ばぅばぅ!」

「よし、それなら」


 ◆◆◆ガルナタタン◆◆◆

 ◆愛称:ガルちゃん

 ◆種族:レキ=バクシーの眷属(ワーウルフ)

 ◆可能性α:0

 ◆可能性β:2


 ステータス画面が変化する。次の瞬間、ガルナタタンの体が光りだす。


「うわっ」


 俺が、思わず手で顔をおおってしまうぐらい眩しい。しかしその光もすぐに消える。


「今のが、眷属強化? ガルナタタン、大丈夫か?」

「ばぅばぅばぅー」


 どことなく嬉しそうなガルナタタンの鳴き声。

 楽しげにその場でぴょん跳ねている。


「それでどう強化されたんだ……」


 俺は屈みこんでじっくりとガルナタタンを観察する。


「んー。よく見ると毛並みの艶が増しているような……手触りも少し良くなって……?」


 俺が呟きながら撫でていると、ブンブンと首を横に振るガルナタタン。


「ばぅぅー」


 いつもより低重音のガルナタタンの鳴き声。次の瞬間、ガルナタタンの真横、空中に拳大の火の玉が現れた。


「ま、魔法?」

「ばぅ!」


 そうですっとばかりに鳴くガルナタタン。ふわふわと火の玉も、肯定するように空中で縦に揺れていた。

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