第19話 お祈りランクアップ

 ──これでお祈りポイントは6、か。どうやらシストメア様が俺の捧げる祈りを受け取ってくれるのは、たぶん6時間ごとだな


 礼拝堂から戻る途中、久しぶりに夜の食事を屋台で調達した俺は、検証結果に思いをはせながら帰宅していた。


「今日は、封筒はなし、と」


 帰宅した俺はいつもの習慣で郵便受けをみる。たまたま空だった。


「不採用通知がきていたら、お祈りランクアップを狙えたかも、なんだがな」


 その独り言に思わず苦笑いしてしまう。まさかこの俺が不採用通知を心待ちにする日が来ることになるとは、少し前なら思いもしなかっただろう。

 それが呼び水だったかのように、カタン、カタンと郵便受けで音がなる。


「ああ、そうか。まだ夕方も早い時間帯だもんな。いま、配達があるのか」


 覗きこんだ郵便受けには、封筒が二つ。


 当然どちらも不採用通知だ。

 すぐに俺の手のなかから消えていく二通の不採用通知。そして、俺のお祈りポイントは8に変化していた。


「10ポイントまで、あとちょうど2ポイント、か。そして次に、祈りを捧げられるのが夜……」


 俺は今後の予定に思いをはせながら、のんびりと夕食の準備をすると、味わいながらそれを食べていく。


 久しぶりに夜に食べた食事は、また格別な物があった。頑強な肉体のお陰で苦にならなくなったとはいえ、空腹自体は、落ち着かないのだ。


 今晩は、空腹を感じたまま眠りにつかなくて良いということに、幸せを感じる。

 だからだろう。今日はもう少し頑張るか、と思えたのは。


「明日は忙しいしな。よし」


 いそいそと俺は外出の準備を始めた。


 ◆◇


「シストメア様、感謝を捧げます」


 俺は夜の礼拝堂に来ていた。他に人影は見当たらない。夜間礼拝用に礼拝堂は解放されていたが、あまり利用者はいない様子だ。


 落ち着いた気分で、手を組み目を閉じて俺は慌ただしかった今日一日を振り替える。


 ──シスター・リニに出会った。それと、ミリサリサと、ちゃんと話したのも今日が初めてだな。この新たな出会いが、善きものだといいんだが……


 最近、こうしてよく祈りを捧げているせいか、すっかり新たな習慣となってきている。まあ、不採用通知を開封する儀式よりは有意義だろう。


 そうして一通り祈ったところで、ステータスを確認する。


「よし。しっかり10ポイント貯まっている。それじゃあ早速、お祈りポイントをランクアップさせるか」


 そして10ポイントを使用した瞬間だった。ふっと目の前が暗くなった。


 ◇◆


「ここは……」


俺は気がつけばいつぞやの夢と同じ場所にいた。ふわふわの雲の地面。どこまでも続く青空。

そこに声がかかる。


「再びまみえたな。たゆむことなき祈りを捧げるそなたの献身、重畳なり。いつも見守っておったぞ」

「シストメア様!」


 俺は再びシストメアと対面していた。


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