第8話 エルフの幼女 その1

キュウは精霊だが人間の姿になることもできるようだ。

頭に狐耳がついた少年の姿になった。


「かわいいーーーー!」


目がハートになっているリリスはもうキュウにぞっこんの様子。


「この姿ではあまり長くはいられないけどね」


「いいのよ。あなたは存在が神よ!推しよ!!萌えるわ!!!」


そういえばルーパーも推しとかいってたっけ。

リリスも感化されているようだった。


もしかすると俺達は何か通じ合えるものがあるのかもしれない。


「トオル、ちょっと」


さっきまでの推しに抱きついての至福の表情から一変。

こっちに振り返る間に感情を記憶の彼方に置いてきたのだろうか?

いつもの俺用の冷ややかな表情に戻っていた。


どうやら通じ合うものはなさそうである。

我ながら淡い期待であった。


「そういえば昨日なんだけど、誰かに尾けられていた気がするの」


隣町からキュウを連れ帰ってきた昨日から不穏な気配を感じていたようである。


「まぁでも、あんたが狙われていることは100%ないでしょうから、可愛いあたしが狙われているんだと思うわ。命を捨てて護衛しなさいよね!」


「命を懸けてだろ!そんな簡単に拾った俺の命を捨てるな」


朝っぱらからこんなやり取りを交わした本日、俺達は神殿と昨日達成した依頼の報奨金をもらうために冒険者ギルドへ行く予定である。

ちなみに、昨日パーティを組んだカイロとは隣町で分かれて、カイロは放心状態でどこか別の町に向かっていった。


そして、俺達が宿舎を出て目的地に向かっている途中。


「さっきの話だけど、近づいてきてるみたい。100メートル、50メートル。どんどん近づいてきているわ」


俺には何も感じないんだが、リリスがそういうので後ろを振り返って確認してみた。


えぇーっと・・・あれは・・・


こういう時って振り返っても何も見つからないのが定番なのではないだろうか。


道端の茂みから黒い細長いしっぽらしきものがはみでている。

それは風に反応するように左右にくねくねとゆれている。

俺達はそれを少し泳がせてみることにしたけど、振り返る度にはみ出したしっぽがみえた。


「いらいらするわね。もう!出てきなさい!!」


反応が分かるくらいにしっぽはびくっと動いた。


「あなた、さっきから頭隠してしっぽ隠さずよ!!」


ぴょん。しっぽが直立したかと思えば、


「お主、なかなかやるのじゃ!」


と言いながらその正体を表した。

耳が尖り、黒いしっぽが生えている幼い少女であった。


「この隠れみの術を破るとは、お主褒めてやるぞ!」


「それもう二度と使わないほうがいいわよ!」


どうやらこの幼女には愛想を振りまくメリットがないと判断したようだ。

まぁまぁとなだめかせて、


「君は?どうして俺達を尾けていたの?」


精霊モードに戻ったキュウもリリスの肩で目をぱちくりさせていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る