1-4 空には夕暮れの月 赤い垂れ幕の下
超自然的に不自然な存在。存在すら認識しようとしなければ見ることすら危うい生物。いや、生きているかも怪しい存在。
面妖な存在。
生物というより、それこそ現象そのもの。18世紀、フランスの博物学者は『過剰』『欠如』『誤配置』の三点で怪物を定義づけたという。たとえば、目玉が異常に多い、片目が欠落している、腕に目が生えている等々……。妖怪、怪異はこのように定義づけられ、学術的に日々研究されているのだ。
「
「私は……大丈夫なのでしょうか」
「ええ。大丈夫です。再発とかはありえません。先程秋田谷にお祓いしてもらったでしょう? 大丈夫。アフターケアも万全です。あなたはもう普通の人間だ」
「はい……ありがとうございます」
「…………? まだ他に何かあるのですか」
「いえ、その……聞かないのかなと。その、鬼に出逢った
「私は専門家でも、カウンセラーでもないですからね。聞かないですよ、そんな個人的なこと」
僕自身の目的はただ一つ。この妖刀「
「普通に生きるって難しいですからね。その上、超能力者なんていう普通の人間でなくなったなんて尚の事。超能力なんて厄介でしかないですよ、ほんと」
あなたがもう二度とこちら側の存在と
※ ※ ※
「いや〜それにしてもさすがでしたな、久遠氏」
「? なにが?」
「いやいや、ご謙遜を。見事な妖かし退治だったじゃないですか」
「いや、今まで何十とやってきたろう。お前と二人で」
「いや、そうだけど。でも、当たり前のことではないですから。久遠氏」
当たり前のことではない。
確かに異常なことだ。心霊体験をしたことのある人間ならそれなりに一定数いてもおかしくないとは思うが、憑依された上にその能力者になってしまうなんて話は、一般的ではないから普通ではない。俺と庵原は立場上、遭遇することが多いから当たり前のように対応しているけど、そう、これは当たり前ではない。たまにはいいこと言うじゃないか。ただのオタクじゃないな。貴様。
「それよりこの漫画はご存知かな、久遠氏」
「なにそれ? たこぴー? ピーナッツの派生形か?」
「いやいや、これだから久遠氏は。いいですかな、この作品はーー」
訂正。ただのオタクだった。今日も彼の講義を聞きながらカクテルを傾ける当たり前のような時間を大切にしようと、そう思った。
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