黄色い魔女の国 短歌二十首

不自然とう汰

黄色い魔女の国


逃げ惑う 僕の足あと 森の中

雪では消えず 銃声響く



真っ白な 粉雪映える

赤い血に 意識遠のく 間際の女神



死んだのか ここは天国? 地獄かな

止まらぬ汗を ぬぐう手に聞く



天井を 見ている僕に 微笑んで

熱いスープと パンを届けに



ありがとう 頷くだけの 答えでも

くるくる動く 瞳は子猫



隣国の 敵の陣地に いる僕に

変わらず君は 優しく微笑む



内緒だと 口に手を当て 微笑んで

僕を連れ出し 川のほとりに



星の夜 扉の鍵を 開ける君

団欒の輪に 僕を受け入れ



百年に 一度現る 魔女が来る

巫女のお告げに 希望は消える



僕は知る 君は王女で 僕は捕虜

上手くいかない 初恋は常



雪が溶け 黄色い魔女が 来るときは

君を守って 共に戦う



春が来て 黄色い魔女が 下りてきた

戦う兵士 無惨に滅ぶ

  


巫女が言う 雨が嫌いな 魔女に勝つ

明日の嵐を 味方につける



雨が降り 魔女が流した 黄色い血

触れたら最後 虚無の世界へ



怪我をした 君を守って 城の外

大丈夫だよ もうすぐ終わる



目の前の 黄色い池に 塞がれて

魔女が現れ 不気味に笑う



生贄が 必要なんだと 魔女が言う

僕でもいいか? 血はもうないが



さようなら 初めて聞いた 君の声

魔女の生贄 ご馳走は僕



一つだけ 願いが叶う 世があれば

君を奪って 故郷の空へ



そうなんだ 僕はこのため 生かされた

振り向く君の 冷めた微笑み



















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