第39話 怠惰卿、密約を知る。
「……という訳なんだ」
宮殿に向かう、物々しい馬車の中。
“憤怒卿”ザルバートは全てを語って聞かせた。
騎士と邪神に挟まれた席で、それを頷き頷き聞く美少年。
全てを聞き終えて、彼は一つの疑問点を尋ねる。
「今起きた。三行で」
疑問点以前に何も聞いてなかった、俺です。
「邪神と契約した王族やばい
権力集中マジパねーから七人に分散
お前がやんなきゃクソブラザーが実権握るぜメーン」
ニュート・ホルン・マクスウェルです。
「センキューのじゃロリ」
「のじゃーん」
のじゃロリとハイタッチ。
「で、殿下? 今のは何語ですか???」
「ニュートきゅん語を使いこなすとは……本当に、契約したんだね」
世界観設定ってさ。
読まないよね、人類。
俺も読まない。紙ならまだしも電子書籍とかでやられると目が死ぬ。
「既に分かっていると思うけど、ダンジョンは金になるし、その主である邪神と契約した者は凄まじい力を得る……王族の魔力じゃないと流石に厳しいけど。
ここで問題があってね」
「あー」
王族ならダンジョンで金儲けできるって事で。
「父上、子供作りすぎだよな。そういや」
「ニュートきゅんかしこい」
ガチムチ武人みてぇな顔してたけど精神はヒャッハーだったパパです。
俺が王位継承権第十五位。
一位はパパの兄弟とかじゃなくて、その長男。
つまり末っ子の俺まで全員、パパの直接の子供だ。
で。
パッパ亡き後。
誰がスーパー権力者優雅貴族になるかっていう。
跡継ぎバトル開催?
「……兄弟間で、ダンジョン利権の奪い合いが始まる。
その前に、王国公認のダンジョン保持者を決めようと言う話だよ」
ほっとけばよくね?
「僕以外の前でそういう態度取らないでね???
末っ子にダンジョンを奪われたって、そう思ってる人多いから」
「ゑ?」
「その、“怠惰の邪神”……ヴェルヴェ=ゴオルの契約をニュートきゅんが持って行った。というよりは、父上がさせた、というかな……。本来は、王位継承権の上から順に与えられるものを、最下位のニュートきゅんが取ったという事だよ」
俺を辺境にぽいってしたパパ。
なに考えてんだろう。
実は何も考えてないんじゃないか? 避妊しろよ。
「邪神との契約なんて外聞が悪いから、この秘密を知るのは王族だけ」
「俺教えてもらってないんだけど」
「その時の授業をサボったのはニュートきゅんだろ? ごめん。分かってる。僕も甘やかしすぎたとは思ってるんだ」
「俺が突っ込む前に反省しないでくれ」
「ニュートきゅんはこれから、確実に巻き込まれる」
「わぁ」
「王族の間の密約だから、貴族の名前じゃ足りない……国王の後ろ盾が必要だ」
〇〇卿ってのはその証だったワケね。なるなる。
しかし……国王の後ろ盾か。
あれ。
「父上死んだんだよね?」
「うん。暗殺」
すっぱり言うねマイブラザー。
「……王位継承権の順番を決めてたのが幸いしたかな」
「あっ」
なるほど理解。
「――――兄さん、アルフレオ兄さんが、次の王だ」
その人物について紹介するなら、うん。
努力の結晶。
俺の、天敵に値する人物である。
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