56.どれが糞スキル予備軍だ?
[レオ]
《コモン》
【呼吸】【生命維持】【瞬発型体力】【自然治癒】【姿勢制御】【直感】【忍耐】
【初級剣術】【初級盾術】【初級拳闘術】…………
※
【スマッシュキック】【毒生成】【巻きつき】【擬態】【潜水】【ホーンアタック】【嗅覚】
【針刺し】【忠誠】【帰巣本能】
《コア》
【自制】【初級魔力操作】
※
【急速回復】
【飛行】【空中静止(ホバリング)】【麻痺毒】【熱耐性】
《レア》
――
※
【闘争本能〈4〉】【酸素魔素好循環〈3〉】【自在制御〈4〉】
【軟化・硬化〈2〉】【体内収納〈2〉】
【ぶちかまし〈2〉】【刺突〈3〉】【突撃〈2〉】【破砕噛〈2〉】
【位置掌握〈2〉】【隠匿〈2〉】【洞察〈2〉】
【毒耐性・中〈2〉】【強毒生成〈1〉】【求心力〈1〉】
《ユニーク》
――
※
【スキル吸収〈1〉】【スキル譲渡〈1〉】
☆
俺が裸で返ってきたのを目撃した連中の生温かい視線に耐えながら、食堂で朝飯を済ませた俺とマリアは逃げるようにギルドへ。
二人でスキル表示板室に駆け込んで、早速チェックする。
「おっ、パッと見でも増えてるのが分かるな」
「そうだね、いっぱいだあ。凄いね、レオ!」
ズラズラと並んで浮かび上がるスキルは明らかに増えてるし、これまで持っていた魔物のレアスキルの半分近くがレベルアップしてるぞ。
「ありゃ、新しい
これは、徒手のファーガスとの戦いを経験して身についたんだろうな。
剣が壊れちまった時用に鍛えときてえけど……あれ? これって、フレーニ婆さんの影響もありそうだな……。
「そんでぇ、魔物のコモンとコアスキルは、全部ヴァンパイア・ビーの結晶から取り込んだヤツだな」
「一体につき五~七種類もスキル結晶を持ってたもんね」
「おう。個体数も多かったしな。それを全部もらったわけだし」
ヴァンパイア・ビーからは、【針刺し】【忠誠】【帰巣本能】【飛行】【空中静止(ホバリング)】【麻痺毒】【熱耐性】を取り込んだけど、数には個体差があった。
特に【忠誠】は数が少なかった。たぶん――つうか、絶対に崖の上にいたクイーンを守っていた奴らが持っていたんだろう。クイーンが死んでもその場を離れないで俺に掛かって来てたからな……。
「あとは、レアスキルだな」
「どれ? 【強毒生成〈1〉】……怖そう。それと【求心力〈1〉】だね」
「強毒はクイーンのだな。アレは死ぬかと思ったもんな」
「えっ!?」
あの時のことを思い浮かべながらしみじみ呟いた瞬間、隣のマリアが俺に掴みかかってきた。襟首をっ! 捩じ上げて!
「死ぬかと思ったなんて、私、聞いて無いよ?! どういうこと? ねえっ!!」
「ぐうぇっ……く、くるじ……い」
そうか、あの時は俺の単独行動だったもんな。彼女が知らないのは当然だ。
そんなことより――。
鬼気迫る表情のマリアの手をタップしても、全然気付いてないみたいで力が弱まる気配がない。
死ぬ……今死んじゃいそうだって!
「わ、わかったから……言うから、離して……手を離してくれ……」
なんとかマリアを宥めて、その時の状況を伝える。
「……そうだったんだ。でも……レオがなんともなくて、生きててくれてホントに良かったぁ」
「お、おう」
たった今、あなたに締め殺されそうだったけどな……。
けど、我を忘れるくらい俺を心配してくれるって嬉しいな。
「でも、今度からそんな無茶しないで……」
俺を見上げてくるマリアの青い瞳は潤んでいた。
こんな狭くて薄暗い部屋で、身を寄せてそんな目で見詰められるとドキドキして変になっちまいそうだ。
俺はなんとか「わ、わかった」って返して、気持ちを落ち着かせる為に表示板に目を移す。
死ぬかと思ったなんて零してしまったせいで、マリアを動揺させちまったけど――。
俺には気になって気になって仕方がないスキルがある!!
そう! 【飛行】に【空中静止(ホバリング)】だ!
俺、飛べるのか?
飛べるのか、俺?!
空をっ!!
男なら、空を飛ぶ鳥を見て一度は思う――願うはず!
自由自在に空をかっ飛んで、空中に浮かびながら腕を組んで敵を見下ろして、物凄げえ速さで空から突っ込んで倒す!
むふっ! ムハハハ……か、かっこいいーーっ!!
「レオ……『俺、飛べるかも』とか思ってるでしょ?」
――ぎくぅッ!!
俺があんまりにも表示板のソコを凝視し過ぎてたからか、マリアに感づかれてしまった!
身振り手振りを入れて、必死に「そんなこと思うワケねえじゃん!」って誤魔化すけど、もう遅かった……。
マリアはでっかいため息をついて、ジト目で呟いた。
「これ、男の子に変な気を起こさせる一番厄介なスキルかもね……」
俺的には、【軟化】がマリアや他人に見られた時の衝撃が大きいから、糞スキル予備軍筆頭なんだけど、マリア的にはそれに【飛行】も加わったようだ……。
これ以上その話をすると、ドツボに嵌まっちまいそうだから話題を変えよう!
「マ、マリアのスキルも見とこうぜ」
☆
[マリア]
《コモン》
【呼吸】【生命維持】【持久型体力】【自然治癒】【姿勢制御】【思考力】【忍耐】…………
【初級杖術】
《コア》
【植物知識】【鉱物知識】【自制】
【初級火魔法】
《レア》
【上級魔力操作〈1〉】【魔力回復〈1〉】
《ユニーク》
――
※
【瞬間回復〈2〉】
☆
マリアには、
【上級魔力操作〈1〉】【魔力回復〈1〉】っつうレアスキルも身についていた。
マリアが実感していた通り、一時的に俺の【酸素魔素好循環】が発動してたからだろう。
俺の糞スキル候補に関しては――。
技は“人間の技”に見せ掛けることができるし、毒系は使わなきゃバレないから、日常から気をつけてればいい。
やっぱり【軟化・硬化】、それと【飛行】【空中静止(ホバリング)】――これはマリアが強硬に主張してきた――が厄介だという結論になった。
あれから二か月、俺たちはDランクに昇格していた。
つっても、相変わらず護衛依頼とちょっと遠めの討伐・採集依頼を受ける毎日だけどな。
そして今も、定期便の護衛の帰り道で、昼休憩中。
「よし、やるかっ!」
早々に昼飯を済ませた俺は、周りに誰もいないのを確認して、気合を入れてダッシュ。
休憩場所から少し離れたここは、草原地帯だけど平坦ってワケじゃなくて大人一人分くらい低くなってる
その窪みに向かって走って行く。
踏み切りを合わせてぇ……
「とうっ!!」
ここからが忙しいんだよな!
瞬発力と【姿勢制御】を活かして、高く飛び立って――。
最高点に着いたら……羽ばたく!!
【飛行】っ!!
「うりゃりゃりゃりゃあーっ!」
両腕をピンと伸ばして、鳥が羽ばたくみてえに……目一杯上下に振るっ!!
ふぬふぬっ、ふんぬぅー、窪地の先まで飛んでってやる!
……でも、現実はそんなことは無く、俺はその場でただただ落ちそうになる。
あ、あれ? ……こうなったら、これだ!
【空中静止(ホバリング)】ぅううう!
落ちた。
「くっ、やっぱり駄目かー。力み過ぎたか? ……時間はまだあるから、もう一回!」
伸びた草の上に難なく着地を決めて、次は脇を
「何やってるの?」
――
目線を上げて見遣れば、俺が“飛び立った”場所に腰に手を当てて、ジトッとした目を向けてきてるマリア。
ヤベッ、見られた……。
「レオ、“飛ぼう”としてたでしょ」
「うっ……そ、そうだけど?」
マリアに図星を突かれて、ちょっとたじろいじまう。
まあ、マリアは俺のスキルを見てるし……その時から『俺ならやりかねない』って言ってたもんな。
だって、【飛行】とか【空中静止(ホバリング)】ってスキルを見ちまうと、試してみたくなっちまうだろ? 男なら!
――ってことで、今まではバレないように慎重に、こっそり隠れて、少しずつ試してたんだけど、遂に見つかっちまったか……。
しっかし、下から見上げると、普段と違う角度からマリアの胸のふくらみが見えて新鮮だぜ。
大人になったなぁ、マリア。
「子どもなんだから……」
俺の視線に気付いたのか、彼女は更にじっとり度を上げた瞳を俺に向けてくる。
「うっ……『穴があったら入りたい』ってこういうことを言うんだろうか」
マリアの視線に耐えながら縁を上りきって、そうボヤいたらすぐに彼女のツッコミ。
「穴なんて自分で掘れるようになったんでしょ、レオは」
そう! 穴と言えば、俺はこの二か月の間に【
イビル・モールっていうモグラ型の魔物をやっつけて手に入れたんだ。
モグラっつうくらいだから、地面の下にいて滅多に地上には出て来ないのが偶々現われて。
これが巨大モグラ叩きみたいに色んなトコから出たり引っ込んだりして、途中から本気になっちまった。挙句に逃げようとしやがったから穴ん中まで追いかけて仕留めたっけ。
そいつからは、他にコモンの【嗅覚】――これは他の魔物の嗅覚と同じ――と、コアの【強聴覚】も手に入れた。退化した眼の代わりになるモンだな。あとは、穴掘り用だろう【強化爪】ってのも有ったな。
このモグラ型やワーム型の魔物がいるから、気安く魔物を埋めて処分することが出来ないそうだ。
ま、それはいいとして、そろそろ休憩も終わりか。キューズに帰ろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます