依存×孤独

 教室に居る誰かから『悩みがあるなら聞くよ』と云われ、幾度いくど心情しんじょうを吐露したことがある。

 正直に『人間関係を構築こうちく出来なくて悩んでいる』と打ち明けると、決まって『そんなこと』と揶揄やゆされて終わる。『イジメられているわけではない』『病気びょうきかかえているわけではない』『容姿ようしみにくいわけではない』『五体満足ごたいまんぞくなのだから贅沢ぜいたく』――で始まり、苦しんでいる人の例え話を聞かされ『あまえている』とくくられる。


 紗良さらは、相手に何も期待していないから、問題は無い。


Ifイフ it isイッツ somethingサムシング thatザットゥ canキャン beビィ solvedソーブドゥ byバイ talkingトーキング, it isイッツ alreadyオーレディ solvedソーブドゥ

 もしも、話して解決かいけつするような簡単かんたんなことならば、すでに悩んでいない。

 打ち明ける見返りにほっするのは、同意どうい同調どうちょうほっしていない意見いけんし付けられたり、ましてや罵倒ばとうされることなんて望んでいない。

 否定ひてい持論じろん、マウンティング――不毛ふもうなやり取りに、不快ふかいにさせられる。相手も、意見が通らなければ不快になる。双方そうほうにとって、これ程無駄むだなものはない。


 とはいえ、話さないことで嫌味を言われるストレスの方が大きい。だから相手が望む行動を取っているに過ぎない。


 仮に、ほっしている言葉と、同調どうちょうだけをられる相手に相談するとしても、紗良さらにとっては、無駄むだな時間。どうするかは、紗良さらの中ですで確定かくていしていて、同調どうちょうされる前提ぜんていで話す。その結果、安心感あんしんかんを得て、気分が良くなるだけ。接待せったいと何ら変わりない。


 紗良さらには、紗良さら自身が、致命的ちめいてきだと認識している欠陥けっかんがある。

 依存心いぞんしんが強く、あまい言葉をけられると、に受けてしまう。紗良さらの意思では抑制よくせい出来ず、一種いっしゅのトランス状態じょうたいおちいる。面識めんしきが無かったり、したしくない間柄あいだがらでも、かまわれるだけで気持ちが高揚こうようし、なついてしまう。

 病的な程の依存いぞん体質。タチが悪いのは、たった一言『大丈夫』といわれるだけでタガが外れ、恐怖心きょうふしんさえも、打ち消されてしまうこと。


 紗良さらが取れる自衛策じえいさくは、人間との最低限さいていげん接触せっしょくつこと。誰がどんなタイミングで何を話すか――紗良さら制御せいぎょすることは不可能ふかのう不意ふいに起きることは、けようがない。

 とはいえ、自分をける人間に対し、嫌悪感けんおかんいだくのは必然ひつぜん

 きらわれるのはいや。だけれど、しばらくすれば強制的きょうせいてきたされる関係。永遠えいえんの別れが訪れる結果は不変ふへん。だから、影響は無い。無理矢理正当化し、強引ごういん孤独こどくになれる環境を構築する。

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