第18話

 ジョンの屋敷は針葉樹で囲まれた青煉瓦の屋敷だ。部屋の数こそ多いが、何故かこじんまりとした印象を受ける。大部屋へと通されると向かい合った豪奢な椅子にヘレンはジョンと座った。能面を被ったかのような女中頭がお茶を持ってきてくれた。

「どうも……ありがとう。……ジョンさん……あなたは確かに……」

「ヘレンさん。その話はもういいんですよ。終わったことです。私は今、ここにこうしています。それだけなんですよ」

「えっ? ……うっ……」


 ヘレンはそこで、言葉に詰まって周囲を身回した。

 向かいに座っているジョンの顔も女中頭の青白い顔。傍の青い暖炉からの異様な雰囲気に、ヘレンは気が付いた。だが、その雰囲気が意味するものが何なのかすらヘレンにはさっぱりわからなかった。


(一体……何なの? この異様な雰囲気は……まるで不気味な……棺桶を見ているみたいな……)


 それに気づくと、ヘレンの身体は更に小刻みに震えていた。

 女中頭が配った熱いお茶を飲んでいるので、決して寒さの影響ではなかった。そう、その雰囲気に似ているのは狩りしている時に醸し出すモートの雰囲気だった。 


(ここから逃げなければ……?!)


 ヘレンはそう思うと同時に即座に立ち上がった。

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