Race.4 D-3最終レース

第47話 最終レース

 D-3リーグ最終レースに使用されるコースは、全4レース中最長を誇る。

 複雑に入り組んだ空洞内を通るコースで、空洞内は強風が吹き荒れる。奇をてらったギミックは無いが、コース後半に待ち構えるカーブの連続は、D-2以上のリーグに所属するレーサーでも簡単には突破できない。

 一部に、これまでのコースには無かった短縮ショートカットルートも存在するが、かなりの操作技術が無ければ活用は難しい。


 「上位リーグへ進むにふさわしいか?」

 そんな問いをぶつけるような、レーサー達を「試す」コースと言える。


 本レースに参加するのは、赤居あかい祐善ゆうぜん一条いちじょうソウといった、リーグを賑わせたレーサー達。それに加え、配信者チーム「Dan-Live A-Team」から、「魔力欠乏症」により休業していたレーサー・戸貝こがいリイナが参戦する。その選手ラインナップから、上位リーグを超える話題を呼んでいる。







「か、加賀美かがみくん、やっぱり電話に出ないよ」

 望見のぞみニナは、スマホを耳に当てながら心配そうに言う。

「そっか」

 加賀美レイが、会場に現れない。

 一条いちじょうソウは、この事態を想定していた。

 昨日、あれだけのことがあった。顔を出しづらい、というのは、理解できる。

「整備の時が大変だけど、まあ――」

 ソウは、言いながら観客席の方を見上げた。

雪野ゆきのも来てるみたいだし、何とかなるだろ」


「そ、そうじゃなくて、あの子大丈夫かな?」

 ニナが言う。

「昨日も落ち込んでたし……元気にしてるといいんだけど」


「そっか。そうだよな」

と、ソウ。

「それも気になる。けど、だからってオレらがレースに集中できなかったら、アイツはもっと凹むはずだ」

 整備中の機体を眺めながら、ソウは言う。

「子どもじゃないんだ。あいつの体調やメンタルを今気にするのは、やめとこう」




「あ、いたいた!」

 ソウ達のところへ、バタバタと走ってくる若い女性が二人。

「一条ソウさんですよね!?」


「え? はい」

 ソウはこくりと頷く。

「私、あなたのレースをずっと見てました! 入院中もずっと! 一緒に走れるなんて、ホントに嬉しいです!」

 前に進み出た女性が、嬉しそうに話す。

 意志の強そうな瞳をした、後ろで縛った赤い髪が特徴的な女性だ。

「今日は、一条さんに勝てるように頑張ります! よろしくお願いしますね!」


「えっと……はい、よろしく」

「リイちゃん、名乗ってないよ」

 勢いに戸惑うソウに、女性に指摘をするもう一人。

「あ、すみません!」

 赤髪の女性は、ハッとした顔で口を手で覆った。


「ダンライブの戸貝リイナです! 今日は、よろしくお願いします!」







<“D-3リーグ”Fブロック最終レース 出場者一覧(括弧内は所属チーム)>

1 一条ソウ・望見ニナ(チーム望見)

2 戸貝リイナ(Dan-Live A-Team)

3 赤居祐善(アカガメレーサーズ)

4 佐東陣(ハバシリBチーム)

5 儀棚友和(千種食器)

6 村道みのり(お茶の間親衛隊)

7 コウテイペンギン(動物園)

8 二船佐恵(グラビアレーサーズ)

9 メイス(シャドウズ)

10 なんだかなあ(言葉遊びレーサーズ)

11 ドン(お笑いの走り手達)

12 景谷尊号(ニードルズ)

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