第30話 異世界人の疑問

「ねぇねぇルリルリ! 日本ってどんなところなの? 見た感じ、皆裕福みたいに見えるけど?」


 歩き始めて数分、リンは周りを見渡しながら私に質問を投げかけた。

 この辺りは住宅街で、大きめのマンションだったり、それなりに家が乱立しているようなところだ。


「裕福ねぇ……まぁ、ここの家はほとんど中間層の人が多いかな? 都心のベッドタウンみたいなものだし……」

「べっどたうん? なにそれ?」

「あぁ、職場に向かいやすいような場所のことだよ」

「へぇ~」


 ベッドタウンって知らない人に説明するの難しいな……。


「……で、最初の質問の答えね、日本がどんなところかって言われると……うーん、そうだなぁ……まぁ不満の一つや二つは多少あるけど、ある程度平和なところかな?」

「ふーん、サンルートとそこまでバリ変わらないね、と言ってもサンルートの場合は、女王様のおかげってのもあるかもしれないけど」

「女王様? それって確か……ラピスが言ってた人? 確か……ダイヤ・サンルートって名前だっけ?」

「うん、その人は本当にすごい人でね、一般人に成りすまして市民の不満を聞き出したりとか、スラムに自ら出向いて炊き出しを行ったりとか、とにかく国民の言葉を聞こうとバリ努力している人なんだ!」

「へぇ~」


 なんか、中東のどこかの国の国王陛下もそんな感じの人だった気がする。

 その方に近いのかな。

 ……と、みんな付いてきてる? 逸れたら大変……。


「……って、ラピス危ない!」

「え!? なんや!?」


 私は車道に出ようとしていたラピスを咄嗟に止めた。

 危ない危ない……車が遠くから来ていたから、危うく轢かれるところだ。

 あの車……避難所に向かってるっぽいな、運転手さんが驚愕の顔でこちらを凝視してる……まぁ無理もない。


「なんや!? あの物体!?」


 ラピスは車を指さしてそう叫んだ。

 あぁーなるほど、車知らないのか。


「あれは自動車」

「自動車? 自動ってことは……車が自動で動いとるんか!? 馬とかやなくて?」

「あ、うん……えぇっとね、簡単に説明すると、化石から出た燃料を使って動かしてるんだよ」

「化石って……冗談やろ?」

「いや、本当」

「……」


 ラピスは黙ってしまった。

 うん、私も逆の立場だったら多分そうなってる。

 でもWeb小説読んでると、異世界の技術でもできそうな雰囲気あるよね、魔法とかで。


「ねぇ……瑠璃ちゃん……空気が煙臭いのって……自動車が……理由?」

「……なんでそう言えるの?」

「燃料……燃やして……動いてる……ということは……煙が出る……だから……臭い」

「あー……かもね」


 キセノンはやはり、頭の回転が速いようだ。


「ということは、道路がこんなに綺麗なのは、その自動車とやらを通すためか?」

「それだけが理由ってわけではないと思うけど……まぁそうかもね」


 より深堀すれば、昔の学生運動が理由とかなんとか……まぁいいか。

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