25
カヨside
『くらいよ……しすいちゃん、くらいよ……ウワァァアア!』
一筋の光すらない部屋の中に閉じ込められ、私はこれまでにない程の恐怖で泣き出してしまった。今でもこの時のことを思い出すだけで冷や汗も出るし、体も震えるし、呼吸も充分に出来なくなる。
『しすいちゃんくらいのどうにかしてよぉ……』
この時私は他人のことまで考えられる余裕は無く、ただひたすら怖い怖いとシスイ様に助けを求めていた。シスイ様は私の王子様なのだから、と。今考えると傲慢にも程がある。シスイ様だって怖かっただろうに。
『どうしよう……私、見捨てられる……』
暗闇の中、シスイ様の怯えた声が聞こえた。が、私は泣きすぎてその言葉に返事も出来なかった。
『私……要らない子……ここで死んじゃう……?』
確かシスイ様はこんなことも呟いていた気がする。
『死にたくない……なら自分で……珈夜さんだけでも……』
幼かった私は自分のことで精一杯で、シスイ様に怖い暗いと連呼するしか出来なかった。
『くらいのこわいっ!』
『ごめんなさいごめんなさいっ! わたしがいたからっ!』
『しすいちゃんっ!』
『わたしが……わたしがなんとかするからっ!』
部屋は暗かった。二人とも手足も縛られていた。それでもまるで私に手を差し伸べるような力強い声でシスイ様が私に話しかけてくれていたことが強く記憶に残った。
その後、どれくらいの時間が経ったか分からないが助けが入り、なんとか二人ともあの場所から抜け出すことが出来たし、もちろん犯人達は捕まった。
後から聞いた話だが、私達が車に乗せられる時に目撃者がいたらしく、そこから通報が入り救出までトントンと運んだらしい。
この一件があってから、私は暗闇が駄目になった。シスイ様は私と遊ぶことが全く無くなった。というか私と会うことすら出来なくなった。
次にシスイ様に会えたのは小学校だった。あの件以前はシスイ様も比較的無邪気だったのに、次に会った時……シスイ様は完璧な人形のようだったのは衝撃的で今でも鮮明に覚えている。
その様子を見て私は思った。シスイ様は助けてくれる王子様ではない、と。
シスイ様だってこの件で傷ついただろう。それでも尚私を慮ってくれるシスイ様を私は尊敬し、微力かもしれなくても守りたいと思うようになった。
だから人助けをするシスイ様を助けるのは私でありたい。
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