23
カヨside
「シスイ様っ!?」
シスイ様は何かを感じ取り、急に走り出した。私はそれにワンテンポ遅れて後を追う。
「~~!!」
「~!?」
「~~!」
シスイ様を追っていくと、複数人の荒げた声がだんだんハッキリと聞こえてきた。シスイ様はこの声を辿ったのだろう。
空き教室の前に立ったシスイ様は制服のポケットを漁りながら教室の中の様子を窺っていた。
……あ、え、えと、シスイ様がその教室内にコッソリ仕込んだのはポケットの中身。多分、ボイスレコーダーだったと思う。一瞬しか見えなかったけど。何故持っているかなんて聞いてはいけないのだろうか?
「アンタウザいのよ!」
「気に食わないから消えてよ!」
「麦ちゃんは人の気持ち分かんないもんねぇ~?」
「さとみ、ちゃん……」
「馴れ馴れしく呼ばないでくれる? 気持ち悪いんだけど。」
「ねぇ、もう徹底的に排除しよ? 椅子を使って殴打とか良くね?」
ああ……なるほど。そういうこと。教室の中でのやり取りから、何が起こっているかを推測する。複数人が一人を寄ってたかって責め立てているのだろう。実に胸糞悪い。クシャリと顔が歪んだのが自分でも分かった。
と、教室内のやり取りに気を取られていた私は、シスイ様の行動に音を立てずに驚いてしまった。
「先生ー! こっちで喧嘩がー! 早く来てー! そうそう! こっちこっち!」
シスイ様はいつもよりワントーン低い声で叫んだ。その瞬間私の腕を掴んで隣にある空き教室に駆け込んだ。
「やばっ!」
「逃げよ!」
責めていたものと同じ声が焦ったように逃げろ逃げろとお互い呼びかける。バタバタと駆ける足音が複数聞こえ、それが止んでからシスイ様は隣の教室へと入る。
「……大丈夫ですか?」
「あ、えと……」
複数人に責められていた
「お怪我はありませんか?」
シスイ様は笑顔でその麦さん(仮)にスッと手を差し伸べる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます