19
カヨside
シスイ様のことについての話だったのに、今やグレンサンの話にすり替わってしまっていた。
「……」
ああ、また一つ要らない情報を得てしまった気分だ。グレンサンの情報を得る度に劣等感に駆られてしまうから嫌なのに。こんな感情は要らない要らない要らない。落ち着け自分。
グレンサンはそのままでもシスイ様の隣に並べる人物。一番近くでシスイ様をお守り出来る力もある。それが何より気に食わない。
私は女だ。どんなに頑張っても男には力で負けてしまう。それではシスイ様を完全にお守り出来ない。私はシスイ様の騎士になりたいのに。傍で守りたいのに。現実は苦くて辛い。
と、どこかに思考が飛んでいるうちに話は進んでいた。
「で、だ。話は戻るが、生徒会長サマのストレスを減らすことは生徒会の活動の円滑化にも関わってくる。俺達も無関係ではない。てことで何か良い案はあるか。」
「そうだねぇ……一緒にストレス解消頑張りましょー、ってまずは言ってみるとか?」
「いえ、ミドリさん。シスイ様ご本人にストレス解消に努めましょうと進言しても、多分聞き入れてくださらないと思いますが。」
「そう?」
「そうだろうか。」
二人とも首を傾げる。それに対して私は縦に首を振る。
私は小さい頃からシスイ様の近くにいた。だからシスイ様の考え方や行動はなんとなく分かるようになったのだ。
「シスイ様はストレスすらも完璧にコントロール出来ていると勘違いしていらっしゃいますから、きっと。」
「そうなの?」
ミドリさんは哀しそうな顔で私に聞く。ええ、悲しいことにシスイ様はそうお考えのようですよ、と私はまた頷いておいた。
「……二人とも、校内新聞は読んでますか?」
「ああ、まあな。」
「その中にシスイ様のインタビュー記事もあったと思います。その中で『ストレス解消法』について書かれたものがあったかと思います。」
「……あったか?」
「うーん、さすがに全ては覚えてないなぁ~」
「そこでストレス解消法は涙活だ、と仰ってます。ご自分のことにとんと疎いシスイ様がストレス解消法について具体的に言及しているということは、ストレスについて思う所があって自ら編み出したということでしょう。シスイ様はご自分のストレスを発散させる気がないなら、そもそもストレス解消法なんて模索せずに溜めたままにするでしょうし。……まあ、結果的にあまり意味は無かったようですが。」
「……随分酷い言い様だな。」
「仕方ありません。事実です。」
シスイ様は一人でなんでもこなして、完璧に振る舞えたと思い込んでいる。確かに完璧ではある。が、それを意識しすぎるあまり、自分のことに目が向かない。
もっと自分の体を大事にして欲しいのに。その想いはいつも届かない。
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