15

グレンside


 衝撃的な光景を目の当たりにして、俺は言葉を紡ぐことが出来なかった。


 なんとか息を吸って言葉を捻り出そうとしたその時、パッと電気がついた。


「あ、付きました。珈夜さん、電気付きました。」


 いつもならキャンキャンと俺に楯突くか生徒会長サマに擦り寄っていくはずの珈夜が、椅子に座ったまま蹲っていた。そしてその背を生徒会長サマがさすっていた。


 暗がりでのやり取りとその様子を見て、珈夜は暗闇が苦手であることはすぐに理解した。


 確かにそれも衝撃的だが、それよりも……


 暗い中、蛍のような淡い光の粒がいくつもいくつも生産されていく様を見て、俺は息を飲んだ。


 あれは……あれは、生徒会長サマが流した涙、なのか? それならもしかして生徒会長サマは……


 俺が知る情報を繋ぎ合わせたら、生徒会長サマの現状を理解せざるを得なかった。


 ここまで酷かったとは。確かに生徒会長サマは気に食わない部分もある。が、それとこれとは話が違う。


「っ……」


 ケロっとしている生徒会長サマの様子を悟られずに観察する。しかしそんな元気そうに見える様子こそ、俺には気味が悪いように見えてしまった。








ミドリside


 パッと電気がついたことにホッとしたのもつかの間、生徒会室の様子がおかしいような気がした。


 珈夜さんは多分暗闇が怖いんだと思う。で、それを知っていた茨水さんは明かりの調達?をしていて──このフヨフヨ浮く明かりをどうやって調達したのかは分からないけど──、紅蓮くんは……なんか辛そうな顔をしていた。


「珈夜さん、今日はもう帰りましょう? ね?」

「……はい」

「紅蓮さんも緑さんも、今日はもう帰りましょう。仕事は私がどうにかしますから。」


 そう言って茨水さんは自分と珈夜さんの分の荷物をまとめ、二人分の鞄を持ちながら顔色が悪い珈夜さんに肩を貸して歩き出す。その腕を軽く引いたのは紅蓮くんだった。


「生徒会長サマ、一つだけ聞いて良いか。」

「はい。」

「先程の光は、どのくらいの時間光り続ける?」

「そうですねぇ……最近は一週間は余裕で光り続けますよ。あ、そこにある光も後で私が片付けるので、そのまま放置で良いです。」

「っ……そ、うか……分かった。」


 一週間光り続ける光源ってなんだろう? 僕は成り行きを黙って見守る。


「では今日はこれで失礼します。……あの、ここの鍵だけ返していただけませんか?」

「分かった。俺が引き受けよう。なんたって副会長だからな。」


 申し訳なさそうな表情を浮かべる茨水さんと、辛そうな表情を押し殺して笑う紅蓮くん。珈夜さんは未だに顔色が悪い。早く良くなりますように、と心の中で僕は祈る。


「ありがとうございます。ではまた明日。」


 ……あ、この時間だともう外暗いよね?


「じゃあ僕も二人についていっても良い~? この暗さで女の子だけで帰すのも怖いし~。」


 こう見えて僕、武道は少し嗜んでるし~。


「緑、頼む。」

「頼まれました~。じゃあ紅蓮くん、後はよろしく~」

「ああ。」


 生徒会室に一人残った紅蓮くんは思い詰めたような顔を隠して僕達を見送った。

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