第7節 亀&龍
第75話 灯火
健闘を称えあったあと6人は解散した。
PCのアキラ、
クライムのプレイヤーの住所は知らないが、アキラは両親と現実世界の
「お父さん、お母さん、お疲れさま」
「「お疲れさま、アキラ」」
自室を出たアキラは夫婦部屋から出てきた両親と洗面所で会い、クロスロードで過ごした今日一日のことを話しつつ歯を磨いてから、互いの部屋に戻って就寝。
そして翌日──日曜日。
今日もアキラは両親とクロスロードを遊ぶ予定。ただ、少しのあいだ別行動になる。理由を両親に説明してからログインした。
このゲームはログインする時、プレイヤーのアバターであるPCの出現場所を 〔
いつもは選択カーソルの初期位置になっている 〔現在の
その宿舎の個室に出現した。
大木の
その目的の 〔
「いってきます」
部屋を出たアキラは昨日と同じく空飛ぶ床板型エレベーターで宿舎の屋上まで昇り、そこから
そこで騎乗した巨大栗鼠 〔ラタトスク〕 に運ばれ、宮を支える世界樹の超巨大な枝へと飛びだした。そして木質の山脈のような枝を渡りきり、果ての見えない絶壁のような幹へと到着。
昨日ラタトスクはここから上に向かったが、今日は下に向かっていく。幹が
その宮は下半分が大地に埋まっている。
超巨大な水晶の球殻である宮の下側と、宮を包みこむ世界樹の幹は、くまなく土に埋まっているわけではない。わずかに隙間があいている所もあり、ラタトスクはそこに飛びこんだ。
ほとんど縦穴になっている洞窟を壁から壁へと跳びうつりながら降りていき──暗くてよく見えないが──やがて降下をやめ、明るくなったかと思えば、ツルツルの水晶で囲まれた横穴を走っていた。
ここは
「ありがとうございました!」
「またいつでも使っておくれ」
¶
世界樹の最下層、第10宮マルクト。
そこはまさに地下という趣だった。
この
世界樹のここ以外の宮では小天蓋が天蓋と同じく空を映しているが、この宮の小天蓋はただの透きとおった水晶で、その向こうに土と、宮の外部にまとわりつく世界樹の枝が見える。
そのため日光の届かないこの地は午前中の今も、あちこちに建つ
和名は
実在する鉱石で、熱すると光る性質がある。その名のとおり、蛍のように。それでも照明として使えるなら実際に使われているだろうから、これはあくまでファンタジーな表現だ。
しかし 〔ファンタジーだからなんでもいい〕 とはせず、光るクリスタルというエモい存在の素材として
そんな蛍火の灯籠が連なる石畳の街路を歩いていく。ここは
そこにある工房の1つを、アキラは訪ねた。
「ごめんくださーい」
「おう、来たな坊主」
中に入ると、顔つきは成人だが背は子供のアキラよりも低い、
ここは始まりの町の職人通りにあった、アキラがオルと出会った場所と同じ、武器屋を営むPCが借りられる店舗。
同一座標に店主PCの数だけ重なって存在する店内空間の1つ 〔オルジフの武器屋〕……オルが始まりの町からこの地に
用件は、すでにメールで伝えてある。
「ったく、折れる前に修理に出せっつったろ」
「今回は剣を使ってる時に折ったんじゃないんですよ。
〔
〔
持ち主が自らの武器としても使う神剣と、それを媒介に召喚する機神は同一存在という設定のため、神剣のHPと機神のHPは同期している。
そのため神剣の状態でHPが0になった時と同じく、機神の状態でHPが0になっても、
今日はそれを修理してもらいに来た。
オルと出会ったあの日と同じように。
「なるほどな。じゃあ今後もちょくちょく折れるワケか。まぁいい、その度にオレが直してやる。さ、依頼してくれ」
「はい」
アキラは店のカウンターでウィンドウを開き、修理依頼の操作を済ませた。カウンター上に2つに折れた神剣の残骸が現れ、オルがそれらを掴んで炉に放りこむ。
それらは炉の中で熔けて流れでて、冷えて固まり1つの
カン カン カン
あの日のアキラはこの仕草を見てもなにも思わなかったが、レティはオルが現実でも鍛冶師をしていると洞察した。それが正解だと知ってから見ると、確かにプロの手並みに思える。
熱い金属は叩かれて細長く成形され、一瞬ピカッと光ると──柄なども含めて元どおりの
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