第72話 媒鳥
「
『『なんだって⁉』』
自分が囮になると言ったアントンの意見を制して、アキラが示した対案に、アントンとクライムは驚いた声を上げた。
だが、簡単な話だ。
「1人でやるのはダメです。牽制がどれだけ通じるか分からないですし。相手は二丁流、アントンさんとクライムさんだけじゃ出てった瞬間に2機ともやられる可能性があります」
『……確かに』
『それでカワセミくん、君も囮になるというのは』
「ボクとアントンさんで一緒に出ますから、クライムさんは一拍 遅れて出てきてください。そうすれば、サラリィはボクとアントンさんに左右の銃を使って、すぐにはクライムさんを撃てません。その隙にクライムさんがサラリィを仕留めてください」
『……自分もそれが最も合理的と思う。アントン、君はどうだ』
『ああ。アキラの意見に賛成だ』
『決まりだな。カワセミくん、合図を頼む』
「分かりました。
『了解だ!』
「
『うおおおおッ‼』
バババババッ‼
アントン機のAF・ドナーが高台にいるサラリィ機へ向かって
同時にアキラも
ババン!
パリン!
パリン!
結果は先ほどの味方と変わらなかった。2機とも物陰から出た瞬間サラリィ機から撃たれて本体HPがゼロになり、無数のポリゴンに砕けて散った。
そしてサラリィ機のほうはアントン機の放った実体弾も、
ババババババッ‼
そこに作戦どおり一拍の時間差をつけて飛びだしたクライム機のSV・アヴァントが、両手に持った2丁の
クライム機が両腕を動かしなが、銃の機能で自動連射された弾たちは、それぞれサラリィ機の微妙に違う位置に飛んでいく。アントン機と
パリン!
パリン!
6発中4発が外れ、残る2発はサラリィ機にではなく、それが持つ2丁の
オリーブドラブ色のクライム機とは色違いの、藍色に塗られたSV・アヴァントだったサラリィ機、その本体は無傷だった。
『なんて強運だ!』
毒づくクライムに、別の脅威が迫る。サラリィ機は高台の奥に引っこんで身を隠したが、敵はそれだけではない。
バババババッ‼
他の敵機、AF・ブリッツらが高台のあちこちから姿を現し、むきだしのクライム機へと弾丸のシャワーを降らせた。
『なんの!』
クライム機はもはや物陰に隠れることはせず、敵のいる高台の上へと続く斜路を駆けのぼりながら、それらをよけた。
そして2丁の
バンバンバンバンバンバンッ‼
駅前広場でのモグラ叩きの再現。クライム機からの銃声がやんだ時、他の機体からの銃声もこの甲府城から消えていた。
それはサラリィ機を除いた敵機を全てクライムが倒したことと、いつしか他の僚機も全てやられていたことを意味していた。
ザッ‼
クライム機が斜路を登りきり、高台の上に到着する。そこは芝生に覆われた広場になっていた。端のほうにお城らしい
そして広場の中央では、本体は無事なものの武器を失って徒手空拳となったサラリィ機が仁王立ちで待っていた。
両者が互いに見合い、動きをとめたのも一瞬。すぐサラリィ機が弾かれたように、クライム機に向かって駆けだした。
バッ!
クライム機が左手の銃を向けると、サラリィ機は即座に横に跳んだ。放たれる弾丸をよけるために決まっているが、実際には弾丸は発射されなかった。
ブンッ‼
サラリィ機の着地点へ向かって、クライム機が今度は右手の銃を
ガイン!
だが、さらにクライム機が左手から投げた銃までぶつけられて、さすがのサラリィ機も動きをとめた。そこへ、投げながら駆けだしていたクライム機が突っこんでいく。
クライム機の
それでサラリィ機に回避運動を強要し、跳躍して両足が地面から離れていたため回避できないところへ用無しの銃2つを投げつけ、動きを封じながら──クライム機が飛び蹴りを放つ!
ダガァッ‼
まともに入った。腹を蹴られ、サラリィ機が吹っとぶ! そして地面に背中を打ちつける──と思われたが、マット体操のようにくるんと後転して、平然と立ちあがった。
『なに⁉』
追いうちをかけようとしていたクライムにも、その動きは予想外だったようだ。すぐ体勢を立てなおして向かってきたサラリィ機の体当たりを食らい、今度はクライム機がたたらを踏む。
だが転倒するまでにはいたらず、踏みとどまって拳を振るい、そこにサラリィ機も拳を合わせ──両機の殴りあいが始まった。
その光景を、
高台の縁から目ていた。
そこへは敵の射線に入らないよう、斜路ではなく石垣をよじのぼって到着した。石垣の側面は
2人の明暗を分けたのは、乗機。
アントン機のドナー、
だがアキラの
その原作どおりの機能の結果だった。
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