第356話 花色
ジャニスティは花が持つその意味に少しばかり、知識があった。それは書庫で多くの書物に触れ読み続けてきたことの積み重ねにより、習得したもの。
その保管されている本に『花の四季色彩と心』と背に書かれた古書がある。それは歴史を感じさせるが大切に愛されてきたのだと分かる綺麗さで彼は、笑みを溢した程だ。
中でもひと際目立つ色鮮やかに描かれた花の絵と、書かれた文章の頁を思い出したジャニスティの胸は今、高鳴っていた。
「旦那様、エデ。お二人は花言葉をご存知でしょうか?」
予想もしないジャニスティの言葉に二人は顔を見合わせる。そして首を横に振り「存じ上げない」と言うエデ、「知っているが覚えてはいない」と不思議そうに答えたオニキス。
その反応にジャニスティは気を引き締め続きを、話す。
「諸説ありますが、花にも生命が宿るとされており、その力を花の言葉として表現されたものです。そこには様々な意味があり、良き方と悪き方、どちらもある。しかし、旦那様の仰るベリル様の枕元に置かれた花が、間違いなくマリーゴールドの花だとすれば……私の知る限り“オレンジ色”には悪い言葉は存在しないのです」
「ほぅ。花には美しい姿形や色だけでなく、それぞれ力を持つとは。驚きですな」
感心するようにジャニスティの声に聞き入るエデは、本当に花言葉を知らないのか? その顔は無表情である。
「うむ、エデの言う通りだ。そしてもし、あの時の花に強い力が働いたのだとすれば、私が全身で癒やしを感じ、少しの冷静さを取り戻せた事も合点がいく」
「魔力を感じない旦那様が、感じ取ることの出来る“力”。あれば心強いでしょうな」
自分の知らぬ領域の話に興味を見せつつもオニキスはあの瞬間に感じた感情の変化について謎が解けるのではないかと期待し、ジャニスティへ質問する。
「ジャニス、そのオレンジ色のマリーゴールドの花が持つと言われる、良き意味の力とは?」
「はい。『予言』そして『真心』と、古書には記載されていました」
(予言と、真心)
「ふふ、ジャニス。君のその表情から察するに、何か閃いたこと、考えが頭にあるということであろう?」
「えっ?」
爽やかな笑顔を見せそう言ったオニキスの言う通り、ほんの数分前とは打って変わりジャニスティの口調や声のトーン、表情までもが明るさを感じさせていた。
「はっはは! 今日の坊ちゃまは少々お顔に出やすいようですな」
彼の方を見たエデは父親の顔で、笑いかけた。
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