第246話 収拾


「だからですわ! 貴女の持つ高貴さも、その謙虚なお姿も、自然と周りに皆さんが集まってくるのも……それで、わたくしたちは貴女の事が羨ましくなって、それで、あんな風に言っていましたけれど。でも本音は――本当は、“いいなぁ”って……」


 自身が抱いた卑屈な考えを後悔し叫ぶように言い続けていた彼女はハッと我に返るよう言葉に、詰まる。


 話が途切れ数十秒待った後、やり取りを静観していた先生が口を開く。


「彼女たちだけではなく、今この場にいる生徒の皆様には日々、先生方がお伝えしていると思います。たとえ何処へいようとも心は淀みなく清らかに流れるように。そして――『くれぐれも周囲に目を配りその立ち振る舞いの美しさを忘れないよう胸に刻み、行動するように』と」


 その言葉を聞きこの場にいる生徒は皆、静かに頷いた。


 顔を見合わせ落ち着いた御嬢様方の表情はだんだんと、柔らかくなっていく。そしてアメジストへ改めてお辞儀をするとまた、話し始めた。


「本当はわたくしたち、貴女と仲良くお話がしたくて」


 恥ずかしそうに自分の素直な気持ちを話した御嬢様を見つめ頬をピンク色に染めたアメジストの背中を、押したのは。


「アメジストお嬢様、本当に素敵なご友人ばかりですね」

「ジャニス……」

(私も皆様と、仲良くしたい)


 目を瞑り一度ゆっくりと深呼吸をする。そうして心を落ち着かせたアメジストはあの華美な御嬢様の元へ行き手を取り彼女の言葉に、応えた。


「あの、ぜひ。もしよろしければ、私も皆様と仲良くしたいです」

「本当……本当に?」

「はい! 本当です」

「ありがとう! あんな事言って、ごめんなさい」


 彼女の問いかけにアメジストは笑いながら、返事をする。その時、吹いた穏やかな風が皆の心を癒し和ませていく。


「うふふ! なるほど、なるほど♪ みんな、アメジストちゃんと仲良くなりたかったのですねッ」


「あの、貴女にもお詫びを、ごめんなさい。そしてお礼を、ありがとう」


「いえいえ、とんでもない! それよりお姉様方♪ ぜひ私もお友達になって頂きたいです」


「もちろんですわ! こちらこそ、お願いします」


「えっと、フレミージュさん? 貴女の寛大で優しいお心に感謝を……ありがとう」


「わぁ~い、では! もう此処にいるみーんなお友達ってことで!!」


 あはは――ッ!!


 緊張感は一気に解け生徒たちの笑い声が響いた、校門前。

 そんな明るく素敵な放課後に場を収めたのは、他でもない。


 アメジストの友人、フレミージュであった。

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