第175話 〜要約〜(ここまでのダイジェストです)

 大雨の夜――。

 ベルメルシア家の御令嬢アメジストとお嬢様付きであるジャニスティが、レヴシャルメ種族の子との運命に惹き寄せられたのは、二日前のこと。


 その後にレヴ族の子がひと族として過ごせるように――“クォーツ”とアメジストから名付けられ表向きはジャニスティの妹として、同時に今後はベルメルシア家で“アメジストの妹”として。


 オニキスには問題なく受け入れられ本当の娘のように、可愛がられる。


 こうしてクォーツが皆に認められるまでの期間は信じられない程に、短い。


――ただし、継母スピナの鋭い眼光を除いては。


 ジャニスティの妹としてクォーツが紹介された時、ベルメルシア家で業務にたずさわる全ての者たちは驚愕と不信感を持つ者もいたが、しかし。クォーツの真っ直ぐな姿勢と可愛らしさで結果的には、成功。


 そこは大きな喜びと幸せがいっぱい、笑顔溢れる朝となった。


 ドキドキとしながらも窓から射し込む光とその明るい周囲の雰囲気に気持ちを助けられていたアメジストであるが、そんな中でも内心息つく間もない――経験したことのない状況。


 心も身体も現実について行くのが、やっとだった。


 それをいつも通り見守り支えながらもこれまでとは違う感覚と心情を持った、ジャニスティ。そして『本当に大切な事とは何か?』と自問自答し“ある想い”に、気付き始める。


 しかしそんな彼にも、現実が。

 クォーツを助ける為、復元魔法により片翼を失くしている。その『代償』とは――今後、ジャニスティの身体はどうなるのか。


 次々に起こる日常を超えた、出来事。中でも一番はやはりアメジストの力が突然、開花したことであろう。


 これにより周囲の雰囲気は輝く光をまとうように笑顔が戻り始める。それはスピナが屋敷の皆へ植え付けていた恐怖心はもちろん、皆の弱り凍っていた心を優しい温もりで、溶かしていった。


 この日、それぞれに抱く意識が明らかに、いつもと違う。

 そしてアメジストの力によってほどけた心境は、変化を迎える。


――しかしその力は母であるベリルと同じ『ベルメルシア家の血筋に継承される魔力』なのか? 不明である。


 さらにベルメルシア家当主、オニキスの心は特に大きな変化が、起きていた。


 今でも十六年前と変わらぬ愛で亡き妻ベリル(アメジストの産みの母)の事を想うオニキスの気持ちはなぜか再度膨らみ何とも言えぬ孤独感と哀しみが、蘇ってきていた。


――それは彼を良き方向へ導く為の、兆しなのか? それとも……。

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