第143話 魔力
「よろしいですね」
「……あぁ、エデ。すまなかった、急いでくれ」
「はい、承知いたしました」
目を瞑りカーテンを閉めたジャニスティはエデに返事をするとアメジストとクォーツへ再び向き合い膝をつき、座る。
「……うぅー」
「クォーツ!!」
悲痛な叫びにも聞こえるクォーツの声を受け止め自分の膝に寝かせたアメジストの手には、目覚めたばかりの魔力――丸く柔らかな光が、浮かぶ。
「大丈夫よ……傍にいるからね」
(私はあの大雨の夜に“この子”を守ると、誓ったの)
――だから、絶対に!
スッ……。
「ふ、あ。ジ、ジャニス?」
「お嬢様、体調の優れない中での魔力消耗はお身体に障ります。これから学校もございますので、今は私にお任せを」
アメジストの
「あ、りがと……。でも! ジャニスも辛いのでしょう?」
「私の事はお気になさらず、問題ございません」
そう言うとジャニスティはクォーツの髪をふわりと撫でおでこに手をかざした。そして囁くような声で癒し魔法を、唱える。
「ルポ(安らぎ)」
キラッ――。
アメジストが眩い光につい
「すごい、すごいわジャニス! なんて素敵な魔法なのかしら!!」
「身に余るお言葉、光栄に存じます。お嬢様」
一瞬の輝きを見せたジャニスティの魔力は優しく、そして強さを持つ。本当は自身も苦痛を感じていたにも関わらずクォーツに安らぎを与えるというその魔法を表情一つ変えずに、詠唱していた。
「それなのに私、お手伝いも出来なくて――」
「いいえ、貴女は十分にクォーツを守っています。今もこうして抱きしめ安心できる“場所”を作る。そう、『
「あ、それは」
――『お嬢様には、他にやるべきことがあります』
三日後に開かれるお茶会の準備。
これをジャニスティが「手伝う」と言っていた、食事の部屋での出来事。皆が驚いたその時、自分にも何か出来ることはないか? と聞いた際に彼から言われた言葉を思い出したアメジストはフッと口元を緩め、気持ちよさそうに眠るクォーツを見つめる。
「お嬢様、ご安心を。だいぶ建物から離れましたので、恐らく私たちの体調も、徐々に戻ることと思います」
そう話したジャニスティは少し安堵した声になると、説明をし始めた。
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