第78話 回答
そしておもむろに立ち上がったオニキスは美しい朝陽の射し込む窓際へゆっくりと足を進め向かいながら、話し始める。
「ジャニー、君の優しさには頭が下がる思いだよ」
「な、何の……話だ?」
恐怖ではない、がしかし。ジャニスティの胸はドクンッと頭から足の先まで音を立てるように、重く鳴り響いた。
そして、図星を指される。
「アメジストであろう? その子――可愛いクォーツちゃんを助けたいと、懇願したのは」
「――!!」
「その反応は正解、という事かな?」
自分が助けた……そう言うつもりで構えていたジャニスティであったがいざオニキスの質問する声に答えられず、冷や汗をかく。
(やはり俺は、この人に隠し事や嘘はつけない!)
その表情を確認せず窓の外を眺めたままのオニキスは半分まで開いていたカーテンに触れ、気持ち良さそうに最後まで開ける。
射し込む温かな太陽光が部屋中に広がり萎縮しかけた心身を、解き放つ。その光を彼越しに見つめるジャニスティは眩しそうに、目を細めた。
(貴方はいつもそうだ。男の自分から見ても惚れ惚れするような立ち姿に、その余裕のある雰囲気が)
――羨ましくもあるよ。
「……」
沈黙の時間――窓際に軽く腰掛けているオニキスの背中は「お前の良い
(このまま黙っているわけにはいかないんだ)
目を瞑り俯き加減で気持ちを落ち着けていたジャニスティの手を柔らかく温かいものが、ふんわりと包み込む。
驚き目を開くとそこには、白く可愛い小さな手。
『お兄様……頑張って!!』
コソッと話しかける顔はピンク色の頬を少し膨らまして「むんっ」。そしてジャニスティの手を包み込んでいた両手を離すと今度は自分の胸辺りで、ギュッと握る。その力強い応援するような素振りを見せるクォーツに、とても勇気付けられる。
(クォーツ、君はどこまで“理解”しているんだい?)
そう思いながらフッと笑い、息を吐き鷹を括ったジャニスティはやっと、口を開いた。
「オニキス、貴方の思っている通りだ。お嬢様は、命の大切さを誰よりも重んじる御方。瀕死の状態であっても自分の事より目の前にある息吹を大事になさる。俺に……私にとって敬重すべき存在だ」
ジャニスティはあの夜起こった光景が目の前に映し出されるかのように、思い出される。
強い雨の降る中でアメジストの優しさを改めて感じた想い、それ以上の気持ちが無意識に、言葉となっていた。
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