第26話 笑顔
レヴの子が見せる屈託のない笑顔は、固くなりかけていた雰囲気を明るく戻させ、その小さな手から送られる幸せは、少しずつ二人の緊張をほぐしていく。
「んっぱぁ~♪」
合図のようなその可愛い声に、ジャニスティとアメジストは顔を見合わせると、心は和み微笑んだ。
「君はとても利口だ。私たちが何か揉めるとでも思ったのだろう?」
頭を軽く撫でながら、ジャニスティはその子に優しく声をかけた。
「むーぅう?」
「はは、大丈夫。怒ったり、喧嘩をしているわけではないんだ。少し難しい話をしようとしていただけだから」
ジャニスティが珍しく声を出して笑っている。滅多に見られないその表情に
(どうしてかしら。なんだか胸の奥がキューッて苦しいような感じがするの……)
「ほ? んたあ~っ!」
ジャニスティの話を聞いたその子は勢いよくベッドの上に立ち上がり、両手を広げ高く天井へ向けて挙げると、元気良く返事をした。
ジャニスティとの会話が成立しているその子が、次に発した言葉。それはまるで「わかった!」と言っているように聞こえてくる。アメジストはドキドキする自分の気持ちを落ち着かせるように、ニコニコと話し始めた。
「そう、そういえばこの子……お名前はなんていうのかしら。言葉も種族のせいか違うみたいだし。あら? でも私たちが話す言葉の意味は、理解しているのね?! とてもすごいわ」
その話でジャニスティは、アメジストの種族への知識が学校レベルであるという事を思い出す。
「今後の事も考えなければなりませんね。お嬢様、まずレヴシャルメ種族について少し、お話しておきましょう」
「えっ、レヴシャルメ?」
そう言うとアメジストは何故か不安な気持ちになり、レヴの子を膝に乗せ後ろから腕を前へ回し、抱き寄せた。するとその子は振り向き嬉しそうな顔で頬を赤らめて、アメジストの瞳に笑いかけてきた。
――あぁ、なんて可愛いのかしら。
アメジストは心の中で呟き、その髪をさらりと撫でる。
「ご存知の通り、レヴ族はあまり他の種族と関わりを持たないと言われていますが、一般的な大人――つまり十六歳になるまでは『他種族の目には触れさせない、言葉は教えない、そして名前を与えない』と聞いております」
初めて聞くレヴ族の話に少し驚くアメジスト。しかしすぐに思い直すと意味あり気で楽しそうな表情で、ジャニスティに笑いかけた。
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