除霊の代金は体で支払ってもらうので気にしないでください
釧路太郎
アイドル編
第1話 鵜崎真白という男
鵜崎真白心霊研究所の従業員は真白先生ただ一人である。忙しい時にはヘルプを頼むこともあるそうなのだが、そんな事は真白先生がこの相談所を立ち上げてから一度しかなかったそうだ。仕事の依頼自体も少ないという事なのだが、ヘルプを頼む必要があるような仕事は真白先生のところではなく鵜崎本家の方へ依頼がいくかららしい。
真白先生は生まれた時に鵜崎家の分家の方へ養子に出されて以来本当の親にあったのは数回しかないそうなのだが、本人も両親もその事を何とも思っていないそうだ。私が調べた限りではあるが、鵜崎家というのは何代も続く除霊師の家系であり女系一族であるらしい。
幽霊の世界では鵜崎という名前は恐ろしいものとして認識されているのだが、それは好き勝手にワガママな振る舞いをしている場合に限るそうだ。基本的には真白先生のように対話を促して説得をしてくれるそうなのだが、それでも聞き入れない場合は強制的に除霊をする事になる。納得して成仏した場合はあっちの世界でも生前のような穏やかな暮らしが待っているが、強制的に成仏させられた場合の行き先は筆舌にしがたい恐ろしい世界に連れて行かれてしまうようだ。
それを知っている真白先生は私をちゃんと成仏させてくれようとしているのだけれど、私がこの世界で何をすれば納得して成仏できるのか誰もわからないので困ってしまっている。私自身、何も覚えていないのでそのヒントすらないという事が悲しいことではあるのだけれど、真白先生と一緒にいられるという事は嬉しいことでもあった。
ただ、真白先生が他の人とエッチな事をしているのを見せられるのだけはいい気分ではない。
「ハッキリ言うけど、そういう相談は家ではなく鵜崎家に頼んだ方が確実だと思うよ。つてが無いんだったら紹介状を書くけど」
「でも、あちらに頼むお金もないんです。最近では仕事も減ってしまって収入も安定していないですし、これ以上負債が増えてしまうと我が社は倒産してしまうのです」
「その気持ちは分かりますが、私に解決出来る問題ではないように思えるんですよ。ここに来たという事はご存知だと思いますが、私には本家のような力は無いですし代金の代わりに接待していただく事になるんですよ。アイドル事務所であるそちらにはここに出入りしているという事実があるだけでも相当なゴシップになると思うのですが、私のところではなくちゃんとしたところに相談に行かれた方が良いと思いますよ」
「お恥ずかしい話ではありますが、すでに本家さんへは相談に行っているのです。ですが、私たちの劇場に憑りついている悪霊を完全に祓うには時間がかかるという事で断られてしまいました」
「本家が出来ないような仕事は私には無理だと思いますよ。ご存知だとは思いますが、私の力なんて本家に比べたらゴミ以下の搾りかすみたいなものですから。お役に立てることも無いと思いますが」
「そんなことおっしゃらないでください。紗雪様から真白先生の事を消化していただいたんです。その時に紗雪様は真白先生なら大丈夫だからと言ってくれたんです。もちろん、こちらの事は調べさせていただきましたし、真白先生が代金の代わりに何を求めてくるのかも存じております。真白先生はうちのアイドルの子たちでは不満だという事でしょうか?」
「不満なんてことは無いですけど、さすがに未成年の子はマズいと思うんですよ。私もその辺だけは気を付けていますからね」
「それなら大丈夫ですよ。成人している子もちゃんといますから。不安でしたら年齢確認が出来る書類も用意しますよ。ただ、その事は口外しないで欲しいのですが」
「そうですか。一つだけ確認させていただきますが、本当に紗雪がここを紹介たって事なんですよね?」
「はい、紗雪様が真白先生を頼ると大丈夫だと教えてくださいました」
「紗雪に頼まれたんでしたら断れないですね。あと、一応成人済みのアイドルの子たちのリストも用意しておいてください。可能であればアイドルだけじゃなくそちらの女性従業員の方のリストもお願いします。紗雪の推薦だったら私も無碍には出来ないですからね」
真白先生に依頼に来る人のほとんどは鵜崎家に断られている人ばかりなのだ。その理由のほとんどは代金を支払うことが出来ないからという事だそうなのだが、真白先生の話ではそう言った仕事をこなすことで鵜崎家本家からいくらかの報酬があるとのことである。
そんな事もあって真白先生は依頼人から代金を支払ってもらう代わりに肉体接待を要求することになるのだが、それは三者とも納得済みの事なのだそうだ。
真白先生は依頼を解決することで鵜崎家から報酬を貰えて生活することも出来、性欲も満たすことが出来る。
依頼人は代金を支払うことも無く問題を解決してもらうことが出来る。
鵜崎家本家は自分たちに相談に来た相手を他の方法で救うことが出来る。
真白先生以外はデメリットもあると思うのだが、依頼者としては本来支払うべき高額な依頼料がたった一晩ベッドを共にすることで無料になるわけだし、鵜崎家としても本家に来た依頼を断るだけで終わらせるのではなく別の鵜崎家の人間が解決することで一応のメンツは保たれるという事になるのだ。
ただ、真白先生が要求する内容が内容だけに本当にそれでいいのかという思いもあるのだが、真白先生はこの仕事を始めた時には去勢手術を受けさせられたから問題ないと言っているのだけれど、そういう問題ではないような気もしているのだよな。
『真白先生って紗雪さんの紹介だから受けたんじゃなくて、アイドルの人に成人済みの人がいるから受けたんですよね?」』
「そう言うわけじゃないよ。俺は紗雪の紹介を断れないってだけさ。断ってしまったら次の紹介が無いかもしれないからね。俺に仕事を紹介してくれるのも今は紗雪くらいしかいないからさ」
『そんな事言いながら所属タレント一覧ってところを見てても説得力無いですよ。毎回毎回真白先生のエッチを見せられるこっちの身にもなってくださいよ』
「そんなに嫌なら見なきゃいいのに」
『それが出来ればやってますって。私は真白先生と同じ空間にしか存在出来ないんですからね』
「そのせいでトイレも風呂もドアを完全に閉めれないんだよな。そこだけが不便なところか」
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