10話

「そーいや昨日からバイトだったか。どーよ調子は」


「まぁボチボチかな。というか基本的に暇」


「しゃあねぇな。今度暇な時に茶化しに行くわ」


「それは勘弁して欲しい。マジで」


 今日も今日とて康太とのなんて事ない会話である。そろそろテストが近いから現実逃避をしてる会話とも言うんだけど、元々僕も康太もテスト勉強はどーにでもなぁれの精神だからあまり関係なかったりもする。お互い赤点さえ取らなければセーフだと思ってる節がある。

 後、そもそも穂澄さんと一緒に働いてるから来られると困る所はややある。


「そういや……今日はなんか静かだな、穂澄」


「あの人が静かなのはいつも通りじゃないかな」


 学校では。って言葉は付くけど。


「ここ最近はなんか愉快だっただろ」


 穂澄さんの方を見ると、なんだろう。なんか気まずそうに顔を逸らした。

 よくよく考えたら昨日はメッセージ連打無かったし、確かに色んな意味で静かなのかもしれない。

 アレかな、昨日の事を気にしてるのかな。僕が地雷踏んじゃったのが原因だし別にいいんだけどさ。

 ……あ、横目で僕を見てる。でも僕がガッツリ見てるから目を逸らした。あざとい感じだけど多分本人に自覚は無いと思う。素でやってる。


「また穂澄となんかあったのか?」


「んー、まぁ色々? ほら、人間色々あるからさ」


「誤魔化し方が雑すぎるだろうが。ったく、俺は除け者ってかー?」


「いや、個人的な話だからほら、勝手に言うのも的な」


 流石にバカ正直に全部言うわけにいかないし、いつも通り適当に誤魔化す。まぁ康太ならある程度は言ってもいいとは思うけど…………いや流石にバ美肉は言いたくない。

 それに穂澄さんは基本的に猫かぶってるから勝手に話すのもよろしくない。康太なら大丈夫だと思うけど、僕と穂澄さんじゃ康太に対しての信頼度はまた別の話だし。


「最近そうやって色々はぐらかすよな。まぁいいけどよ。言えるようになったら言ってくれや」


「助かる。また今度映画でも見よう」


「お前のチョイス、終わってんだよなぁ……」


「基本的に母さんのお気に入りの影響だから許して欲しい」


 母さんの動画配信サイトのお気に入りリストが今の僕を作ってるといっても過言ではない。いやちゃんと面白い物もあるけど、インターネットのオタクがネタ擦ってるけど本編は見てなさそうな映画がラインナップの八割を占めている。母さん曰く、ちゃんと全部見てるらしいから凄いと思う。怖いとも言う。今でも増え続けてるし。


「まぁ映画は置いといて、バイト頑張るこったな。お前はもうちょっと労働に対して意欲を向けるべきだと思うぞ」


「そこはほら、社会に出た時の僕に丸投げしようかなと。後の事は後の自分に任せるべきだと思う」


「マジでそういう所な」


 呆れ顔の康太を見つつ、でもそれはそれとして今の状況の方が大変じゃない……? なんて思うのであった。


△▼△



「き、昨日はごめんなさい……ついカッとなって……後、謝るのも遅くなってごめんね……」


「いやぁ、あれは僕が地雷踏んだみたいな所あるから大丈夫だよ」


「でもやっぱり……」


「それに許可も貰ってきたから。翔華は宇宙猫みたいな顔してたけど」


「えっ、そーなの?」


 バイト先に向かう道で穂澄さんと昨日の事を話しながら歩く。今日は一日ずっと謝るタイミングを計っていたのであろう。二人きりになったタイミングでそうやって謝ってきた。

 にしても今日も学校では一日しおらしかった。いつもこうならいいのに……とは思いつつ、それで夜芽アコの面白みが無くなったらそれはそれでアレだから丁度いいバランス感覚で居て欲しい。


「流石に許可は貰っておかないとなぁ……って。ほら、やっぱりやらかした直後だし」


「うっ……ごめんなさい」


「まぁ大丈夫大丈夫」


 こうやって悪いと思ったら謝れるのが穂澄さんのいい所ではある。悪い所は頭に血が上りやすいとも言う。


「それにそんな長くやるわけじゃないし、時給も良いから割り切ろうかなと。声も変えるみたいだし身バレの心配も無いだろうしさ」


「……なんだか乗り気になってる? なにかあったの?」


「え、いや。そんな事はないよ。ハハハ」


 穂澄さん対策も兼ねてる……なんて言うわけにはいかない。これは嘘ではなく言わないという選択肢を選んだだけである。


「ほら、そんなことより切り替えて行こう。僕配信者活動の経験は無いから穂澄さんを頼りにしたいなぁ。なんやかんや話題のVTuberだし、先輩としての意見とかアドバイスが聞きたいかも」


「……せ、先輩……!? …………そうだね! 私もVTuberだから、良い感じのアドバイスが出来るかも!! ……先輩……ふふふ……」


 なんとなく言ったことではあるけど、思ったより上機嫌である。

 ……まぁなんというか、人付き合いに飢えてる節があるし、先輩後輩の関係とかにも憧れがあるんだろうなぁと思う。穂澄さんの友達増やしとかも色々考えないとなぁ……とは思う。

 と言ってもアテがないからその辺りはまた今度考えよう。……いや無いわけでは無いけど、一年の時の様子を見る限り、多分穂澄さんはあの人……日岡さんは得意じゃないだろうしなぁ。まぁ今度考えよう、今度。

 今は仕事について考えよう。さて、どうなるんだろう。そもそもVTuberって何をやるんだろう?


△▼△


「はい! というわけで早速VTuberとして……青チェック付けて、バズってるポストにリプライしてインプレッションを稼ぐ所から始めましょう!!」


「それただのインプレゾンビじゃないですか」


 なんだか早速暗雲が立ち込めてきたぞ??


「いやぁ、冗談っすよ冗談。ほら、早速配信……なんて流石に無謀じゃないっすか。いや準備はもういろいろやってるんすけど。なんでまずは小粋なジョークと、やってもらいたい方向性の説明をしたいなと」


 良かった流石に冗談か……そう思っていると、涼風さんはなんだか本を手渡してきた。

 なになに、タイトルは…………『下賎な人間にもわかるお嬢様言葉』???


「ウチが思う最強つよつよV……清楚お嬢様系VTuberとして活躍してもらうために、まずはお嬢様言葉を理解していただこうかな、と」


「清楚お嬢様系VTuber???」


 いやボケて康太とお嬢様言葉縛りやった事はあるけどこんな伏線回収あるなんて思わないじゃないか。

 というか清楚……清楚ってなんだろう。自慢じゃないけど夜芽アコとかを筆頭に、僕は清楚と無縁に近い配信者を見てるからそもそも清楚って概念がよくわからない。


「なるほど清楚……俊介君。大丈夫だよ! 私、清楚には詳しいんだ!!」


「え、穂澄さんが???」


 穂澄さんが清楚に詳しくなんてビックリだ。清楚とあまり関係無さそうなのに…………と思った所で、なんとなく察しがついた。


「ほら私……夜芽アコとか見てるから! 清楚系Vだからね! 夜芽アコ!!」


 ……一応、本当に一応なんだけど、夜芽アコって自称清楚系だった。

 なんだか自信満々な穂澄さんとは逆に、僕は色々と不安になってきた。




あとがき

オーバーラップ公式ブログさんがまた更新されてるよー……先週の日曜日にな!!すいません更新なかなかできませんでした。そして今回のキャラクター紹介はあの二人です。先駆者と諸悪の根源です。よかったら見てね!

https://blog.over-lap.co.jp/enbui_syosekika/

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