第42話 やったか……? ⇒ やってない
ゆっくりと目を開く。
時間の感覚がおかしい。
たった今、俺が体感してきた時間が経過している様子はない。
どうやらスカーレットによる
少し離れたところでは、ルージュと
そして先程まで俺をいたぶっていた
俺は自分の周囲に視線を向ける。彼女は俺の隣で倒れ伏していた。何故かセピアを介抱しているバーミリオンの姿まで見える。
セルリアンの部下――
どうやら、まだ少しぼんやりしているようだが状況はそれを許さないはずだ。
俺は自分の頬を両手でピシャリと叩くと気合を入れ直す。
「バーミリオン。セピアは助かるのか?」
「……神核は無事だ……何とか助かるだろう」
「以前にもこんなやりとりをした気がするな……」
セピアが助かると聞いてほっとした。
俺はふッと鼻を鳴らす。
安心した俺はセピアとバーミリオンに近寄ると、そっとしゃがみ込む。
そして横たわっているセピアの
傷はほぼふさがっているようだが、
その表情は穏やかで、彼女はまるでただ眠っているだけのように見えた。
心がかつてない程に落ち着いているのが自分でもよく分かる。
精神と言う名の水面には波紋1つ、
劇的に変わった感じはしないが、斬り飛ばされたはずの左腕も元通りに再生しているし、闇の
つまりはそう言う事なのだろう。
すると、手の平からスーッと刀身が現れてどんどん実体化していく。
やがて姿を現したのは黒い刀で、
刀身がやたらと長いのが少し格好良いと思ってしまい、自分の中の
今の俺の力がどれほどのものなのかは俺にも分からない。
まだ未知数だが、いい加減に終わりにしたいものだ。
俺はゆっくりと一歩前に踏み出すと、その
構わず無造作に歩みを進めるが、2人の距離は縮まらない。
このままでは
セピアとルージュかからは力の使い方を教わっている。
後はそれを俺が持つ
既に俺の中に戦い方は根付いている。
俺の
最上級魔神すらも凌駕する力の波動を感じるとも聞いた。
ならば試そう。
その力を。
駆ける。
覚悟を決めたのか、その表情は真剣そのものだ。
どこか気迫めいたものすら感じる。
最初に俺の前に現れた時とは大違いだ。
それは一発一発が結構な大きさで密度もかなりのものだ。
魔人化したことによって霊的エネルギーの感知能力も上がっているように思える。
そんなことを考えつつも走る勢いを弱めない俺に
これも実験だ。
神人だった時、微力ながらも防御フィールドが形成されていたことを考えると、魔人化しても同じ、いやそれ以上のフィールドが展開されてもおかしくない。
結果は――
予想通り。
これは想像以上だ。
刹那の間に
受け太刀する気か?
構うものかよッ!
諸々ぶった
俺は構わずに黒刀を思いきり振り抜いた。
受け止められると思っていたその一撃は易々と闇の剣を斬り裂いた。
黒刀は
「ガアアアアアアアアアアア!」
俺はそんなことなどお構いなしに返す刀でその右腕を斬り飛ばした。
宙に舞う右腕。
あっさりと上半身と下半身に両断される哀れな
「クソがぁックソがクソがクソがクソがぁぁぁぁぁぁ!!」
そんな怨嗟の叫びを撒き散らしながら、両断された下半身は黒い塵と化し、上半身は虚空へと消え去った。
闇の剣にしろ
「倒したのか……?」
困惑する俺の耳には
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