第120話 エピローグ(16)

 ホワイトエンジェルの花が満開になるのは、一年先。これから一年の間に私たちは一体どんな想い出を作るのだろう。


 今はまだ想像もつかない未来を思って、私がそっと微笑んだとき、リンッと鈴の音が響き、ふわりとした優しい風が私の頬を撫でた。


“たくさん喜んで、時には怒って、悲しんで、精一杯楽しんで、そんなたくさんの感情を大切に大切に積み重ねて。僕はいつだってきみのそばで見守っているから。だから、どうか――幸せでいてね”


 そんな声が聞こえたような気がして、風が走り去った方へ目をやる。しかし誰もいない。けれど、誰かがそこにいるような気がして、私は力強くうなずいた。


 空は快晴。柔らかな陽光が私たちに降り注ぐ。春風に吹かれ、ホワイトエンジェルの花が、優しく風に揺れていた。





Fin

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