第99話 冬の章(27)
眉尻を下げた司祭様は、ひどく言いにくそうに口籠った。
「え?」
司祭様のお言葉の意味が理解できなくて、私が呆けたままの顔で固まっていると、司祭様の横でフリューゲルが、まだ見慣れない背中の大きな羽をパサリと開いた。それに気を取られ、彼の方へ視線を向けると、じっと見つめてくるフリューゲルの視線と重なった。
「本来、学びを行うのは、僕だったんだよ」
「フリューゲルが?」
「そう。『時、来たりしとき、片翼を学ばせよ』の片翼は、僕のことを指していたんだ。そして、『時、来たりしとき、片翼を羽ばたかせよ』の片翼は、きみのことだよ。アーラ」
「私?」
「うん。
「昇華? 私の昇華ってどういうこと?」
今や泣きそうになりながら私は、彼に答えを求めた。双子の片割れにも哀しみの影が落ちている。
「アーラは、僕が天界へと連れてきてしまった、白野つばさのココロノカケラなんだ」
「私が、ココロノカケラ?」
自分の顔を指差しながら、私はこれでもかと目を見開いた。きっと今の私はこれまでで一番間抜けな顔をしているに違いない。でも仕方がない。だって、フリューゲルの悲しそうな、それでいて真剣そのものの眼差しを真っ直ぐに受ければ、それが嘘や冗談であるはずないことくらい分かってしまう。でも、だからこそ私はその話をどうやって受け止めれば良いのか分からない。
「あの時、僕たちが母さんのお腹の中で別れた時に、僕はきみの流した涙を手にしていた。それにきみの魂の一部が宿ったんだ」
「そんな事って……」
信じられないと首を振る私に、フリューゲルは淡々と話しかける。
「あり得ないことではないよ。まぁ、通常ココロノカケラはこちらの世界に未練があって留まることの方が多いけど。きみも実際にココロノカケラに会っているんだから、その存在は信じられるだろ?」
フリューゲルの言葉で、学校の花壇で出会ったまだ幼い少女の顔が脳裏に浮かんだ。
「だから、あなたはあの時、私とあの子が惹き合ったと言ったのね。フリューゲルは、私がココロノカケラだと知っていたから」
「うん。僕と司祭様は、僕たちの記憶の意味を考えたんだ。そして、アーラが本体である白野つばさから分かれてしまった彼女の一部であると結論付けた」
「アーラが他の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます