第97話 冬の章(25)
「私とフリューゲルはやっぱり双子だったのよね?」
「うん。あの日の記憶も僕たちのものだ」
「あの、暗い水の中の記憶?」
「そう。きみのお母さんが言っていたように、僕たちはお母さんのお腹の中でもうまくやっていた」
「……でも、私たちは
寂しそうに話を続けるフリューゲルの顔を見ていると、胸の中がザワザワと波立つ。そのざわつきを抑えたくて、私は早口に捲し立てるが、そんな私に、フリューゲルはゆっくりと首を振って、傍らに立つ司祭様へ視線を向けた。
司祭様は、フリューゲルの視線を受け止めると優しい微笑みを彼に向けてから、私の手を取った。
「アーラ。さぞや混乱していることでしょう。
「可能性?」
司祭様とフリューゲルを交互に見比べる。
「フリューゲルの話によりますと、母親の体内にいた時分、フリューゲルは神のお声を聞いたとか」
司祭様の言葉に、フリューゲルはしっかりと頷く。
「神はフリューゲルのみを天界へ上げるおつもりだったのでしょう。しかし、貴方方の絆はとても強いものだった。そう、ココロノカケラが生まれてしまう程に」
「ココロノカケラ?」
司祭様の話が飲み込めず首を傾げる私の耳にしっかりと言葉を届けようとするかのように、フリューゲルが私と視線を合わせてくる。
「あの時、お母さんのお腹の中できみと離れ離れになるのが悲しくて寂しくて、僕はきみの流した涙を一緒に天界へと連れてきてしまったんだ。もちろん、あの時の僕には何の力もなかったから、神様のご配慮があったのだけど」
これから先の話は聞かない方がいいと思いながらも、聞かずにはいられない。私は、自覚もないままに聞き返していた。
「どういうこと?」
「きみはあの時、確かに下界に生まれ落ちたんだ。白野家の一人娘、白野つばさとして。そして、時を同じくして
「ええ? それってどういうこと?」
フリューゲルの言葉に混乱する私の手を、司祭様が優しく叩く。一定のリズムを刻むそれに、ざわつく私の心も次第に馴染んでいく。司祭様の手に包まれていると、それだけで何故だか安心できた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます