第47話 秋の章(3)
青島くんが
次回、
手持無沙汰に周辺を掃いていると、羨ましそうなフリューゲルの声がした。
「アーラだけ、焼き芋、良いなぁ」
「あら。フリューゲル。あなた、焼き芋がどんなものか知っているの?」
「知らないよ。でも、この前の帰りに、焼き芋屋さんの車とすれ違った時、とてもいい匂いがしていたのは覚えてる」
「そういえば、そうだったわね」
フリューゲルとの会話で、
「あは! おなか鳴っちゃった」
盛大な音に思わずおなかを押さえると、さらに大きな音がした。そんな私の隣で、フリューゲルは少し呆れ顔になる。
「アーラは、すっかり下界の人だね」
「何よそれ?」
「だって、僕ら
「仕方ないでしょ。これは……ええっと。何だっけ?」
「生理現象?」
「そう、それそれ!」
最近の私たちは、下界で学んだ表現を使って会話をすることが増えた。
「下界の人って、そういうのが大変だよね。食事したり、トイレに行ったり、お風呂に入ったり。僕たちには、そういうの関係ないからね」
「そうね。ここに来た頃は、時間とかそういう生活の習慣に慣れるのが大変だったけど、今はもうそれが当たり前になったわ。そういう意味では、私はもう立派な下界の人かも」
私は言葉を切ると、二っと笑ってフリューゲルの顔を覗き込んだ。
「でもさ、フリューゲルも結構下界に馴染んじゃってるよね?」
「僕が?」
「うん。だって、焼き芋屋さんに興味を示す
「確かにね」
フリューゲルは、ふふっと口元を綻ばせた。最近のフリューゲルは、こうして笑うことが増えた。下界の人たちのように、大きな声で笑ったり、はしゃいだりすることはないが、それでも、私たちが
「学び」のために下界へとやってきた私と一緒にいることで、フリューゲルも下界に感化され始めたのかな。
フリューゲルの笑顔に釣られて、私の顔も綻ぶ。
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